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コンセプトシートの作り方|ひとり事業の芯を1枚にする7項目と手順

personスモゼミ編集部 event2026-07-16 公開 event_available最終確認 2026-07-16

「誰に、何を売る事業なのか」。頭のなかでは決まっているつもりでも、集客の場面になるとぶれます。発信する相手が日によって変わり、値段の理由もその都度ちがう言い方になる。これは記憶力の問題ではありません。コンセプトが、まだ形になっていないから起きます。

コンセプトは、1枚のシートに落として初めて事業を動かします。書いてあれば見比べられて、迷ったときに立ち返れるからです。頭のなかにあるうちは、そのときの気分で解釈が変わってしまいます。

この記事では、コンセプトシートの作り方を、書く7つの項目と1枚を埋める手順で解説します。

作ったシートを集客・値付け・商品設計の判断に使うところまで踏み込みます。各項目そのものの決め方は事業コンセプト設計の一連の記事で解説しているので、この記事は「1枚にまとめて使う」ことに絞ります。

この記事の要点

  • コンセプトシートは、誰に・何を・どのように・提供価値・価値根拠・30秒説明・やらないことの7項目を1枚にしたものです。
  • 頭のなかのコンセプトは判断基準になりません。書いて初めて、決めていないところが空欄として見えます。
  • 埋まらない欄は、文章力ではなく設計の穴です。その欄を先に片づけてから1枚に戻ります。
  • 1枚に収めてください。収まらないのは絞れていないサインです。
  • 作ったあとが本番です。発信先・値段・商品の線引きに迷ったら、シートを開いて答え合わせをします。

コンセプトシートが必要な理由|頭のなかの芯は判断基準にならない

コンセプトを1枚にする目的は、清書することではありません。迷ったときに開く判断の基準を、自分の外に置くことです。頭のなかにあるコンセプトは、その日の気分や目の前の相手に合わせて、無意識に形を変えてしまいます。

書くと、決めていないところが見える

コンセプトを書き出すと、たいてい途中で手が止まります。「誰に」の欄で、絞ったつもりが3種類の相手を並べてしまう。「価値根拠」の欄で、何も書けずに固まる。

この手が止まった場所こそ、シートを作る収穫といえます。頭のなかで考えているあいだは、曖昧なところを曖昧なまま通り過ぎられるからです。書くと通り過ぎられません。空欄は空欄として、目に見えて残ります。

判断のたびに考え直さなくてよくなる

書いていないコンセプトは、判断のたびに考え直すことになります。SNSで何を発信するか、この案件を受けるか、値段をいくらにするか。そのつど頭のなかの芯を呼び出していると、判断は毎回ぶれます。

1枚あれば、判断は「シートと照らして合うかどうか」に変わります。考える対象が「事業とはなにか」から「これはシートと合っているか」に縮むぶん、決めるのが速くなるわけです。ひとりで事業をするなら、この差が効いてきます。ぶれを止めてくれる上司はいません。

コンセプトシートに書く7つの項目

コンセプトシートは7つの欄でできています。誰に・何を・どのようにの3点が土台になり、そこに提供価値と価値根拠、30秒説明、やらないことが乗る構造です。

書くこと分量の目安
誰に買う人の状況を、ひとつに絞って書く1行
何を相手が受け取るものを、モノ・サービスの形で書く1行
どのように届け方・進め方のうち、他と変わる部分を書く1行
提供価値相手の状況がどう変わるかを、相手の言葉で書く1行
価値根拠なぜそれができるのかを、事実で書く1行
30秒説明上の5行を、声に出して30秒で言える文章にする3〜4文
やらないこと引き受けない仕事・狙わない相手を書く2〜3項目

上の5行は、それぞれ担当の記事がある

上の5行の中身をどう決めるかは、この枝のほかの記事が担当しています。誰に・何を・どのようにの決め方は「誰に・何を・どのように」の3点設計で解説しました。3点をもっと具体的にしたいなら5W1Hでコンセプトを組み立てるが使えるでしょう。

提供価値と価値根拠の2行は、提供価値と価値根拠の言語化で深掘りしています。この2つはセットで書くところに意味があり、「〇〇できます」だけでは信じてもらえません。30秒説明の欄は30秒で説明できるコンセプトにするの内容をそのまま持ち込みます。ここで言葉に詰まるなら、上の5行がまだ絞れていない証拠です。

やらないことの欄が、シートを使える道具にする

7つ目の「やらないこと」は、ほかの6つと性格が違います。ここだけは、コンセプトの中身ではなく、コンセプトの外側を書く欄だからです。

なぜこの欄が要るのでしょうか。事業を続けていると、コンセプトから外れた依頼が必ず来るからです。単価が良い、断りづらい、暇だから受けたい。そういう場面で「これはコンセプトに合わない」と考えても、答えは出ません。合うか合わないかは、いくらでも解釈できてしまいます。

先に「やらない」と書いておけば、判断が解釈から照合に変わります。**書いてあれば、迷う時間そのものが消えます。**これが、シートを飾りではなく道具にする欄です。

コンセプトシートの作り方|7項目を1枚に埋める手順

7つの欄は、上から順に埋めていきます。3点を決め、価値と根拠を足し、30秒に縮め、最後に線を引く。この順番には理由があり、下の欄は上の欄がないと書けない構造になっています。

STEP 1|誰に・何を・どのようにを1行ずつ書く

最初の3行は、それぞれ1行に収めてください。行が長くなるほど、絞れていないと考えていいでしょう。

「誰に」の欄で複数の相手を並べたくなったら、そこで手を止めます。ひとりで事業をするなら、相手を広げるほど手数が足りなくなるからです。絞り込みそのものに迷いがあるなら、ターゲット設定に戻ってから続きを書くほうが早く終わります。

STEP 2|提供価値と価値根拠を足す

3点が書けたら、その下に提供価値と価値根拠を1行ずつ足します。提供価値は「相手の状況がどう変わるか」を、相手が使う言葉で書いてください。自分の作業内容を書く欄ではありません。

価値根拠は、その価値がなぜ出せるのかを事実で書く欄。ここが空欄のまま先に進むと、あとで値段の説明ができなくなります。

STEP 3|30秒説明にまとめる

上の5行を、声に出して30秒で言える文章にまとめます。頭のなかで整えるのではなく、実際に口に出して時間を計ってください。読むと通るのに、話すと詰まる文章があるからです。30秒に収まらないなら、直すのは文章ではなく上の欄のほうです。

STEP 4|やらないことを2〜3項目書いて線を引く

最後に、引き受けない仕事と狙わない相手を書きます。「なんとなく違う」ではなく、依頼が来たときにその場で判定できる粒度にしてください。

たとえば「大きな会社の仕事はやらない」では判定できません。「10人以上の会社は受けない」なら判定できます。この欄は、自分への約束というより、判定のルールとして書くものです。

記入例|1枚に落ちた状態を見る

7つの欄が埋まると、次のような1枚になります。ここでは「開業して間もない小さな飲食店に向けて、ひとりでメニュー写真を撮る仕事」という設定で書いています。

記入例
誰に開業3年目までで、席数20席以下の飲食店の店主
何をメニュー写真の撮影と、そのまま使える加工済みデータの納品
どのように営業前の2時間だけ訪問し、1回で10品を撮り切る
提供価値店を休まずに、その日から使えるメニュー写真がそろう
価値根拠撮影から加工までひとりで完結し、打ち合わせと再訪問を挟まないため
30秒説明20席以下の飲食店の店主に、営業前の2時間で10品を撮って、その日から使える写真をお渡しします。店を休まずに済むのは、撮影も加工もひとりで完結しているからです。
やらないこと席数の多い店の一括撮影/人物撮影/動画

この1枚があると、「動画も撮れませんか」と聞かれたときに考え込まずに済みます。値段を聞かれたときも、「営業前2時間・10品・当日渡し」という形が先にあるので、何に対する値段なのかを説明できるでしょう。シートの価値は、書かれた言葉の巧みさではなく、判定できる形になっているかどうかにあります。

作ったシートの使い方|集客・値付け・商品設計の判断基準

コンセプトシートは、作った時点では半分しか働いていません。集客・値付け・商品設計という3つの場面で開いて初めて、事業を動かす道具になります。

集客|「誰に」の欄が、発信先と言葉を決める

発信で迷うのは、たいてい相手が定まっていないからです。誰に向けて書くかが決まらないと、置く場所も、使う言葉も決められません。

シートの「誰に」の欄は、この迷いに答えを出します。20席以下の飲食店の店主が読む場所はどこか、という問いに変わるからです。問いが具体的になれば、答えも具体的になります。

値付け|「提供価値」と「価値根拠」が値段の説明になる

値段の説明ができないとき、足りないのは相場の知識ではありません。何に対していくら払ってもらうのかが、自分のなかで固まっていないだけです。

提供価値が「店を休まずに写真がそろう」なら、値段は撮影時間ではなく、休まずに済むことに対して付いています。それを下から支えるのが価値根拠。逆に、この2行を読んでも値段の理由が立たないなら、値段より先にコンセプトを直すほうが効きます。

商品設計|「どのように」の欄が、作るものの形を決める

商品を作るときにありがちなのが、できることを全部詰め込んでしまう失敗です。詰め込むほど良いものになる気がしますが、実際には相手にとって何の商品かがわからなくなります。

「どのように」の欄は、その歯止めになります。営業前の2時間で10品、と書いてあれば、商品の形はそこから決まるからです。足したい要素が出てきたときも、この行と合うかどうかで判定できます。

案件を受けるか迷ったら、やらないことの欄を開く

迷う案件は、たいてい魅力があります。単価が高い、相手が大きい、実績になりそう。だから迷うわけです。

そういうときこそ、やらないことの欄を開いてください。判断が「受けるべきか」ではなく「書いた線の外にあるか」に変わります。感情ではなく照合で決められるぶん、断りやすくなるはずです。

もちろん、線の外の仕事を受けてはいけないわけではありません。ただ、線の外だと自覚して受けるのと、気づかずに受けるのは別のこと。前者なら例外として処理でき、後者はコンセプトが静かに崩れていきます。

書き直す基準|前提が変わったら直す

シートは石碑ではありません。想定していた相手が買わなかった、価値根拠にしていた条件がなくなった。こうした事実が出たら、該当する欄を書き直してください。

ただし、直すのと逃げるのは違います。売れないからコンセプトを広げる、というのはたいてい逃げ。書き直す理由は「新しい事実がわかったから」であるべきで、「うまくいかないから」ではありません。

応用・次の一歩|1枚をAIとの共通言語にする

コンセプトシートは、AIに仕事を任せるときの前提としても使えます。ひとりで事業をする人にとって、ここがこの1枚の使いどころのひとつになるでしょう。

AIに文章や企画を作らせて、出てきたものが的外れになる原因の多くは、前提を渡していないことにあります。誰に向けた事業で、何を約束していて、何をやらないのか。これを伝えずに「集客の投稿を書いて」と頼めば、当たりさわりのない一般論が返ってきます。7つの欄を貼り付けてから依頼すれば、出力は自分の事業に寄ってくるはずです。とくに「やらないこと」の欄は、AIが広げすぎるのを止める役に立ちます。

もうひとつ使えるのが、シート自体をAIに読ませて穴を突かせる方法。「この価値根拠は、相手から見て信じられるか」と問わせると、自分では通り過ぎていた曖昧さが出てきます。ひとりで事業をしていると、こうして突っ込んでくれる相手がいません。

ただし、シートを埋める作業そのものをAIに任せるのは順序が逆です。決めるのは自分で、AIは決めた中身を検査する側。空欄をAIに埋めてもらったシートは、読めば整っていても、迷ったときに立ち返る力を持ちません。

よくある質問

コンセプトシートは何枚くらいになりますか。 1枚に収めてください。紙ならA4が1枚、画面ならスクロールせずに全部が見える量が目安になります。2枚に増えると、迷ったときに読み返さなくなり、書いた意味が薄れます。収まらないのは書き方の問題ではなく、絞れていないサインだと考えてください。

まだ売上がない段階でも作れますか。 作れます。むしろ売上が立つ前のほうが、書く効果が出やすくなります。決めていないところが空欄としてはっきり見えるからです。この段階の中身は仮の答えでかまいません。実際に売ってみて違っていたら、そのときに直します。

埋まらない欄があるときはどうすればいいですか。 空欄のまま残して、その欄を先に片づけてください。埋まらないのは書く力が足りないからではなく、その部分がまだ決まっていないからです。誰に・何を・どのようにが埋まらないなら3点の設計から、価値根拠が書けないなら根拠の言語化から戻ります。

作ったシートはお客さんに見せるものですか。 見せるものではありません。コンセプトシートは自分が判断するための道具で、そのまま読ませても相手には響きません。読ませる言葉は、シートの中身をもとに別に作ります。ただし30秒説明の欄だけは、口頭でそのまま使える形にしておくと便利です。

どのくらいの頻度で見直せばいいですか。 期間で区切るより、前提が変わったときに開くほうが実用的です。想定していた相手が買わなかった、根拠にしていた条件がなくなった、といった事実が出たときが見直すタイミングになります。半年たっても何も直していないなら、シートを使っていない可能性があります。

まとめ

コンセプトシートは、誰に・何を・どのように・提供価値・価値根拠・30秒説明・やらないことの7項目を1枚にしたものです。頭のなかにあるコンセプトは、その日の気分で形を変えてしまいます。書いて外に置くから、判断の基準として働きます。

作るときは上から順に埋めてください。3点を1行ずつ書き、価値と根拠を足し、声に出して30秒に縮め、最後にやらないことで線を引く。埋まらない欄が出たら、文章をひねるのではなく、その欄の設計に戻ります。空欄は書く力の不足ではなく、まだ決めていないことのしるしです。

そして、作ってからが本番になります。発信先に迷ったら「誰に」の欄を、値段の説明に詰まったら「提供価値」と「価値根拠」の2行を、案件を受けるか迷ったら「やらないこと」の欄を開いてください。判断が解釈から照合に変われば、決めるのは速くなります。

1枚に収まらないうちは、まだ絞れていません。逆にいえば、1枚に収まったコンセプトは、ひとりの手数でも回せる形になったということ。

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