「個人事業主とフリーランスは何が違うのか」と聞かれて、はっきり答えられる人は多くありません。じつは、この2つは比べるものというより、別の角度から同じ人を見た言葉です。
この記事の要点
- フリーランスは「働き方」の呼び名、個人事業主は「税の区分」です。角度が違うだけで、対立するものではありません。
- 多くのフリーランスは、開業届を出して個人事業主でもあります。両者は重なります。
- 税金や社会保険のしくみは、どちらも基本は同じです。違いは開業届の有無や、青色申告が使えるかに出ます。
- フリーランスでも、事業として続けるなら開業届を出すほうが、節税などの面で有利です。
結論:違いは「働き方」か「税の区分」か
先に結論を言うと、フリーランスと個人事業主は、次のように見る角度が違うだけです。
- フリーランス:組織に属さず、案件ごとに契約して働く「働き方」の呼び名
- 個人事業主:税務署に開業届を出して事業を営む「税の区分」
だから、フリーランスとして働く人が開業届を出せば、その人は働き方はフリーランスで、税の区分は個人事業主、ということになります。どちらか一方を選ぶ話ではありません。
フリーランスとは
フリーランスとは、会社や組織に雇われず、自分のスキルで案件ごとに仕事を請け負う働き方を指します。エンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタントなど、職種はさまざまです。
長らく法律上の明確な定義はありませんでしたが、2024年11月1日に、いわゆるフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました(政府広報オンライン、2026年7月時点)。この法律で、発注する側には、取引条件を書面などで明示することや、仕事を受け取った日から原則60日以内に報酬を支払うことなどが義務づけられました。つまり、フリーランスという働き方が、取引のルールの面から守られるようになったということです。
個人事業主とは
個人事業主とは、税務署に開業届を出して、個人で継続的に事業を営む人のことです。こちらは働き方ではなく、税金の世界での区分です。
会社をつくらずに、自分の名前で反復・継続して事業を行い、開業届を提出していれば個人事業主に当たります。定義や開業の手順をくわしく知りたい人は、個人事業主とは|なり方・税金・経費・法人化まで完全ガイドを読んでください。
具体的に何が違うのか
働き方と税区分という視点の違いは、実務では次の3点に表れます。
| 項目 | フリーランス(開業届なし) | 個人事業主(開業届あり) |
|---|---|---|
| 開業届 | 出していない | 出している |
| 青色申告 | 使えない(白色のみ) | 使える(最大65万円控除) |
| 屋号 | 名乗りにくい | 屋号を届け出て使える |
いちばん大きいのは、青色申告が使えるかどうかです。開業届と青色申告承認申請書を出していないと、青色申告特別控除(最大65万円)が受けられません。
同じ収入でも、控除の有無で納める税金が変わります。逆に言えば、開業届を出すだけで、この節税の入口に立てます。
税金と社会保険は、どちらも基本は同じ
ここは誤解されやすいところです。個人事業主とフリーランスで、税金や社会保険のしくみそのものが変わるわけではありません。
どちらも、1年間の所得を自分で計算して確定申告し、所得税や住民税を納めます。会社員のときの厚生年金と健康保険からは外れ、国民年金と国民健康保険に自分で加入します。
この点は、開業届を出していてもいなくても同じです。違うのは、開業届を出して青色申告を選べるかどうか、という手続き面だけだと考えてください。
フリーランスは開業届を出すべきか
結論から言うと、事業として継続して収入を得ているなら、フリーランスでも開業届を出すのが基本です。理由は主に3つあります。
- 節税できる:青色申告が使え、最大65万円の控除で税負担を下げられます。
- 屋号の口座がつくれる:屋号を届け出れば、屋号名の銀行口座を開設でき、事業の信用につながります。
- 事業として証明しやすい:融資や補助金の申請で、事業を営んでいることを示しやすくなります。
いっぽうで、注意点もあります。会社を辞めて開業届を出すと、原則として雇用保険の失業給付は受けられなくなります。
すでに事業を始めた、と見なされるためです。退職後すぐに独立するのか、しばらく求職するのかで、届け出のタイミングを考えるとよいでしょう。
どちらを名乗ればいいか
名乗り方は、相手と場面で使い分ければ十分です。仕事の相手に働き方を伝えるなら「フリーランス」、税務署や役所の手続き、融資の場面では「個人事業主」がなじみます。どちらも同じ自分を指すので、無理に統一する必要はありません。
よくある質問
フリーランスと個人事業主は何が違いますか。 フリーランスは「働き方」の呼び名、個人事業主は「税の区分」です。フリーランスが開業届を出すと、税法上は個人事業主にもなります。対立ではなく重なる関係です。
フリーランスは開業届を出さないといけませんか。 義務ではありませんが、事業として継続的に収入を得ているなら提出が原則です。開業届を出すと青色申告が使え、節税や屋号口座の面で有利になります。
税金や社会保険は違いますか。 基本は同じです。どちらも確定申告を行い、国民年金と国民健康保険に加入します。違いは開業届の有無や青色申告が使えるかに出ます。
フリーランス新法で何が変わりましたか。 2024年11月の施行で、発注側に取引条件の明示や60日以内の報酬支払などが義務づけられ、フリーランスの取引が守られるようになりました。
まとめ
個人事業主とフリーランスは、比べるものではなく、税の区分と働き方という別の角度から同じ人を見た言葉です。多くのフリーランスは、開業届を出して個人事業主でもあります。税金や社会保険のしくみは共通で、違いは開業届の有無と青色申告が使えるかに表れます。
事業として続けるなら、フリーランスでも開業届を出して、青色申告の節税を使うのが基本です。始め方の全体像は、次の記事でつかめます。
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