「30代の働く女性に、時短料理のレッスンを、オンラインで」。3点は埋まったのに、明日から何をすればいいのかは決まらない。コンセプトを作った人が、よく行き当たる場所です。
足りないのは粒度です。「誰に・何を・どのように」は、事業の骨格を決めます。ただ骨格だけでは、どこで出会うのか、いつ必要とされるのか、いくらで渡すのかが空白のまま。空白を残したコンセプトは、集客の場面で必ず止まります。
この記事では、3点をWho(誰に)What(何を)Why(なぜ提供するか)Where(どこで)When(いつ)How(どのように・いくらで)の6つに開き、抽象的なコンセプトを具体化する手順をたどります。
6行を書き終えたときには、コンセプトが行動に落ちる状態になります。
この記事の要点
- 3点設計は骨格、5W1Hは肉付けです。骨格だけでは、集客の場所も価格も決まりません。
- 6つの問いはWho(誰に)What(何を)Why(なぜ提供するか)Where(どこで)When(いつ)How(どのように・いくらで)。3点のうち「どのように」の1語が、Where・When・Howの3つに割れます。
- 抽象語で埋めた6行は、空欄と同じです。固有名詞と数字まで下ろしてください。
- Whyは後回しにされやすいのに、選ばれる理由を決めるのはここです。
- 6行がそろうと、告知の場所も、値付けも、仕事を受けるかどうかも、そこを見て決められます。
なぜ3点だけでは動き出せないのか
「誰に・何を・どのように」の3点は、コンセプトの芯を決めます。ただ、3点を決めた直後に手が止まる人は少なくありません。
理由ははっきりしています。3点の粒度が粗いからです。「30代の働く女性に」と書いても、その人が平日の夜にスマホを見ているのか、土曜の朝に時間を作れるのかまではわかりません。わからないうちは、告知を出す場所も時間も選べないままです。
とくに「どのように」という1語には、届ける場所・タイミング・形・価格が全部詰まっています。1語のままでは動かせません。だから開きます。
5W1Hは、そのための道具です。3つの箱を6つに開き直すだけで、書けていなかった部分が浮かび上がります。
3点そのものの決め方は、「誰に・何を・どのように」の3点設計で解説しています。3点がまだ埋まっていないなら、先にそちらを済ませてください。
5W1Hの6つの問い|3点をどこまで開くか
3点と5W1Hは、別々のフレームではありません。3点の各要素を、より細かい問いに開いたものが5W1Hです。対応はこうなります。
| 問い | 日本語で言うと | 3点設計との対応 | ここで決めること |
|---|---|---|---|
| Who | 誰に | 誰に | 相手の状況と困りごと |
| What | 何を | 何を | 渡す中身。相手が受け取るもの |
| Why | なぜ提供するか | 何を(の裏側) | 選ばれる理由と、自分がやる理由 |
| Where | どこで | どのように | 出会う場所と、届ける場所 |
| When | いつ | どのように | 相手が必要とするときと、提供する時間 |
| How | どのように・いくらで | どのように | 提供の形と価格 |
表のとおり、「どのように」の1語がWhere・When・Howの3つに割れます。ここが5W1Hを使う最大の理由です。「オンラインで」の5文字に押し込めていた中身が、3行に分かれて出てきます。
Who(誰に)|属性ではなく状況で書く
「30代女性」は属性です。属性だけでは、その人が何に困っているのかがわかりません。
書くべきは状況のほうです。「平日は21時まで帰れず、週末にまとめて作り置きをしたいが、レシピを探す時間がない人」。ここまで下りると、届ける時間帯も、伝える言葉も決まってきます。
絞ることに不安を感じるかもしれません。ただ、ひとりで事業を回すなら、届く範囲は最初から限られています。狭くしたぶんだけ、その人に向けた言葉が書けるようになるでしょう。
相手をさらに深く絞り込む手順は、ターゲット設定で解説しています。
What(何を)|手段ではなく、相手が受け取るものを書く
「料理教室」は手段の名前です。相手が受け取るのは、教室そのものではありません。
受け取るのは「週末の2時間で1週間分の作り置きが終わる状態」かもしれませんし、「毎晩の献立を考えなくてよくなる時間」かもしれません。手段の名前で止めてしまうと、ほかの教室と並んだときに違いが出ません。
Why(なぜ提供するか)|2つの向きで問う
Whyは後回しにされやすく、空欄のまま残りやすい項目です。それでも、選ばれるかどうかを決めるのはここになります。
問いには2つの向きがあります。ひとつは「なぜ相手にとって必要か」。もうひとつは「なぜ自分がやるのか」。前者だけだと、同じことを言う人が並んだときに違いが出ません。後者だけだと、独りよがりになります。
この2つが噛み合った1行を書けると、コンセプトは急に具体的になります。「何ができるか」と「なぜそれが可能か」をセットで言葉にする手順は、提供価値と価値根拠の言語化で解説しています。
Where(どこで)|出会う場所と届ける場所は別
Whereには2つの意味が混ざります。相手と出会う場所と、実際に届ける場所です。
出会う場所は、告知を出す先のこと。Instagramなのか、地域の掲示板なのか、知り合いからの紹介なのか。届ける場所は、オンラインの通話なのか、自宅なのか、借りた部屋なのか。
この2つを分けて書くと、集客の作業が具体的になります。「オンラインで」の1語で止めているうちは、どちらも決まっていません。
When(いつ)|相手の時間に合わせる
Whenも2つに分かれます。相手がそれを必要とするときと、こちらが提供する時間です。
作り置きの例なら、必要になるのは日曜の午前でしょうか。であればレッスンは土曜の夜か日曜の朝が現実的で、平日の昼に告知を出しても届きにくいことになります。
自分の都合で時間を決めると、届く人が減ります。相手の1週間を思い浮かべてから決めてください。
How(どのように・いくらで)|形と価格を同じ行で決める
Howは、提供の形と価格をまとめて決める場所です。1回2時間の講座なのか、月4回の伴走なのか、録画の教材なのか。形が決まると、価格の考え方も見えてきます。
形と価格を別々に決めると、たいてい噛み合いません。1回きりの講座に月額の値段は付けられませんし、伴走に単発の値段を付けると自分が持ちません。同じ行で決めるのは、そのためです。
よくあるつまずき|3つのパターン
6つの箱を用意しても、埋め方でつまずくことがあります。
抽象語で埋めてしまう
「丁寧に」「本格的な」「初心者向けの」。こうした言葉で6行が埋まっているなら、まだ空欄と変わりません。読んだ人の頭に、具体的な絵が浮かばないからです。
固有名詞と数字まで下ろせているかを見てください。「初心者向け」ではなく「包丁を握るのが週1回以下の人」。「本格的な」ではなく「調味料は家にある5つだけ」。下りたぶんだけ、相手は自分のことだと気づきます。
全部の欄を大きく書こうとする
6つすべてを広く取ると、コンセプトは元の抽象に戻ります。Whoを「働く人全般」、Whereを「オンラインと対面の両方」、Howを「単発も継続も」。これでは開いた意味がありません。
ひとりで回す前提なら、各欄はむしろ狭く書くほうが機能します。狭く書いて足りなければ、あとから広げられます。逆に、広いものを狭めると、集客の言葉をつくり直すことになるでしょう。
6行が互いに矛盾している
Whoに「時間がない人」と書いたのに、Howが「毎週90分の通い」になっている。よくある食い違いです。
6行は独立していません。Whoを変えればWhereもWhenも動きます。書き終わったら、6行を続けて読んでみてください。声に出して違和感が残るなら、どこかが噛み合っていません。
6行がそろうと、何が変わるか
6行を埋め切ると、コンセプトが日々の判断の材料に変わります。
告知を出す場所で迷ったら、WhereとWhoを読みます。価格を下げるべきか迷ったら、HowとWhatを読みます。新しい仕事の相談が来て受けるかどうか迷ったら、6行と照らす。ずれていれば断る、という決め方ができます。
ただし6行のままでは、まだ人に伝えられません。長すぎるからです。削って芯だけ残す作業は、30秒で説明できるコンセプトにするで解説しています。人に話せる形になって、はじめてコンセプトは外で働きます。
そして、削る前の6行は捨てないでください。1枚のシートに残しておくと、迷ったときに戻れます。残し方はコンセプトシートの作り方で解説しています。
事業を続けていれば、6行は書き換わります。相手が変われば、WhereもWhenも動きます。半年に一度は読み返して、現実とずれた欄を直す。この更新を続けられるかどうかが、コンセプトを生きたまま保てるかの分かれ目になります。
よくある質問
5W1Hと3点設計は、どちらを先にやりますか。 3点が先です。3点で骨格を決めてから、5W1Hで肉を付けます。順番が逆になると、細かい欄から埋めることになり、事業の芯がぶれます。3点の決め方は「誰に・何を・どのように」の3点設計で解説しています。
5W2Hにして、How much(いくらで)を分けたほうがよいですか。 分けても構いません。ただ、ひとりで事業を回すなら、提供の形と価格は同じ行で決めるほうが噛み合います。欄を増やすより、6行を具体的に書くほうが先です。
6つの欄が全部は埋まりません。どうすればよいですか。 埋まらない欄が、いま考えるべき場所です。空欄を仮でよいので埋めてから、実際に動いて確かめます。とくにWhereとWhenは、机の上で決め切るより、告知を1回出してみるほうが早く決まります。
業種によって、重くなる欄は変わりますか。 変わります。店舗を構えるならWhereの比重が大きく、オンラインの教材ならWhenの自由度が高いぶんWhoの絞りが効いてきます。6つを均等に扱わず、事業の形にとって効く欄から書いてください。
5W1Hを埋めたら、コンセプトは完成ですか。 まだ材料の段階です。6行は具体的ですが長く、人に話せる形にはなっていません。削って30秒で言える形にし、1枚のシートに残して、はじめて使える状態になります。
まとめ
「誰に・何を・どのように」の3点は、コンセプトの骨格です。ただ骨格だけでは、集客の場所も、届ける時間も、価格も決まりません。空白を埋める道具が5W1Hです。
6つの問いは、Who(誰に)What(何を)Why(なぜ提供するか)Where(どこで)When(いつ)How(どのように・いくらで)。3点のうち「どのように」の1語が、Where・When・Howの3つに割れます。ここが開くことの要点です。
埋めるときは、抽象語で止めないでください。固有名詞と数字まで下ろすほど、相手は自分のことだと気づきます。欄は狭く書くほうが機能します。
6行がそろえば、告知の場所も、値付けの見直しも、仕事を受けるかどうかも、そこを見て決められます。あとは削って短くし、1枚に残す。コンセプトが動き出すのは、そこからです。
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