「フリーランスは自由に働ける」。会社を辞めて独立する人が増え、そんな言葉をよく聞くようになりました。ただ、会社員からフリーランスに変わると、働き方そのものより先に、お金と保険で「自分でやる範囲」が大きく広がります。
会社員のときは会社がやってくれていた税金の精算や保険の手続きが、フリーランスになると自分の仕事になります。ここを知らないまま独立すると、あとで税金や保険料の負担に驚くことになりかねません。
この記事では、フリーランスと会社員の違いを、税金・年金・健康保険・雇用保険・労災という順で比べます。
働き方の呼び名ではなく、お金と保険で何が変わるかに絞って整理します。制度の要件や金額は改正で変わるため、最終的には日本年金機構や国税庁など公式の案内もあわせて確認してください。
この記事の要点
- 違いの本質は、雇用契約か業務委託かです。会社員は雇われて働き、フリーランスは仕事ごとに契約して働きます。
- 会社員の税金は、勤め先の源泉徴収と年末調整で精算されます。フリーランスは自分で確定申告します。
- 厚生年金と健康保険の保険料は、会社と本人が半分ずつ負担します。フリーランスの国民年金と国民健康保険は、全額が自分の負担です。
- 会社員は雇用保険と労災保険に守られます。フリーランスは雇用保険の対象外で、労災は特別加入という任意の制度があります。
- 自由と引きかえに、税金と保険の手続きが自分の仕事に加わります。独立の前に、その範囲を知っておくと判断を誤りません。
フリーランスと会社員の違いは「雇用されているかどうか」
会社員とフリーランスの分かれ目は、雇用契約を結んで働くか、仕事ごとの業務委託で働くかにあります。この一点から、税金や保険の違いがすべて枝分かれしていきます。
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 契約 | 雇用契約 | 業務委託・請負 |
| 働き方 | 会社の指示で働く | 自分の裁量で働く |
| 税金の手続き | 源泉徴収・年末調整(会社) | 確定申告(自分) |
| 年金 | 厚生年金+国民年金 | 国民年金 |
| 健康保険 | 健康保険(会社と折半) | 国民健康保険(全額自己負担) |
| 雇用保険 | あり | なし(原則対象外) |
| 労災保険 | あり(会社が加入) | 原則なし(特別加入は任意) |
会社員は雇用契約で働く
会社員は、会社と雇用契約を結んで働きます。雇用契約とは、会社の指示に従って働き、その対価として給料を受け取る約束のことです。
働く時間や場所、仕事の進め方は、基本的に会社が決めます。そのかわり、税金や社会保険の手続きの多くを、会社が代わりに引き受けてくれます。
フリーランスは業務委託で働く
フリーランスは、仕事ごとに業務委託や請負の契約を結んで働きます。業務委託とは、決まった成果や仕事を引き受けて、その対価を受け取る約束のことです。
だれかに雇われているわけではないので、いつどこで働くかは自分で決められます。そのかわり、税金や保険の手続きは、すべて自分の仕事になります。
なお、フリーランスと個人事業主は、重なる部分が多い言葉です。税の区分としての個人事業主との違いは、個人事業主とフリーランスの違いで解説しています。
お金の違い|税金は源泉徴収か確定申告か
会社員の所得税は、勤め先が給料から天引きして納め、年末調整で精算します。フリーランスは、この一連を自分の確定申告で行います。
会社員は源泉徴収と年末調整でほぼ完結する
会社員の給料からは、毎月の所得税があらかじめ引かれています。これを源泉徴収(給料から税金を天引きして、会社が代わりに納めるしくみ)といいます。
天引きされた金額は、あくまで概算です。1年の終わりに、正しい税額との差を調整します。年末調整とは、源泉徴収された所得税と、その年に納めるべき所得税の差額を精算する手続きとされています(国税庁 No.2665、2026年7月時点)。
だから多くの会社員は、自分で税金を計算して申告する場面がありません。この手間を会社が引き受けている点が、フリーランスとの大きな違いになります。
フリーランスは自分で確定申告する
フリーランスは、1年分の所得と所得税を自分で計算して申告します。確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得と、それに対する所得税額を計算して確定させる手続きとされています(国税庁 No.2020、2026年7月時点)。
申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。この時期までに、1年分の売上と経費を集計して、税額を出します。
会社員が会社に任せていた部分を、フリーランスは自分でやります。そのかわり、事業のための出費を経費にできるなど、自分で調整できる幅も広がります。青色申告(一定の帳簿づけを条件に控除などが受けられる申告方法)を選ぶ人が多いのも、この幅を生かすためです。
保険の違い|年金と健康保険は「会社が半分」か「全額自分」か
会社員の厚生年金と健康保険は、保険料を会社と本人が半分ずつ負担します。フリーランスの国民年金と国民健康保険は、保険料の全額が自分の負担です。
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 年金 | 厚生年金+国民年金 | 国民年金 |
| 年金保険料の負担 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
| 健康保険 | 健康保険 | 国民健康保険 |
| 健康保険料の負担 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
会社員は厚生年金と健康保険、会社が半分を負担する
会社員は、厚生年金保険と健康保険に入ります。厚生年金は、だれもが入る国民年金に上乗せされる年金で、その分だけ将来受け取る年金が手厚くなります。
保険料の負担には、大きな特徴があります。厚生年金の保険料率は18.3%で、これを事業主と被保険者が半分ずつ(折半で)負担するとされています(日本年金機構、2026年7月時点)。健康保険の保険料も、事業主と被保険者が折半します(全国健康保険協会、2026年7月時点)。
つまり、給与明細から引かれている保険料と同じ額を、会社がもう半分出しています。ここが、フリーランスとの負担の差を生む一番のポイントです。
フリーランスは国民年金と国民健康保険、全額を自分で負担する
フリーランスは、国民年金と国民健康保険に自分で加入します。国民年金の保険料は、令和8年度(2026年度)で月額17,920円とされています(日本年金機構、2026年7月時点)。
国民年金や国民健康保険には、会社が半分を出すしくみがありません。保険料は、全額が自分の負担になります。ここが、会社員との一番の差です。
さらに、フリーランスが入る国民年金には、会社員の厚生年金のような上乗せがありません。将来受け取る年金は、会社員より少なくなりやすいといえます。国民年金基金やiDeCo(自分で積み立てる私的年金)で、上乗せを自分で用意する選択肢もあります。
働けないとき・仕事を失ったときの備えの違い
会社員は、失業や仕事中のけがに、雇用保険と労災保険で備えられます。フリーランスは雇用保険の対象外で、労災は自分で特別加入する制度があります。
会社員は雇用保険と労災保険に守られる
会社員は、雇用保険に入ります。労働者を雇用する事業は、業種や規模を問わず原則すべて雇用保険の適用事業となり、雇われる労働者は被保険者になるとされています(厚生労働省、2026年7月時点)。仕事を失ったときの基本手当(いわゆる失業手当)などが、ここから支払われます。
ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満の場合などは、適用の対象外になります。
あわせて、仕事中や通勤中のけが、病気に備える労災保険(労働者災害補償保険)にも守られます。労災保険の保険料は、全額を会社が負担します。
フリーランスは雇用保険がなく、労災は特別加入になる
フリーランスは、だれかに雇われて働くわけではないため、雇用保険の対象外です。仕事が途切れても、会社員のような失業手当はありません。
労災保険も、本来は雇われて働く労働者のための制度です。ただし、令和6年(2024年)11月1日から、企業などから業務委託を受けるフリーランスは、業種や職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました(厚生労働省、2026年7月時点)。
特別加入は、任意の制度です。加入するかどうかは自分で決め、保険料も自分で負担します。仕事中のけがが、そのまま収入の落ち込みにつながりやすいフリーランスにとって、備えの選択肢が一つ増えたことになります。
フリーランスになる前に整えたい、次の一歩
独立を決めたら、税金と保険の手続きが自分の仕事に加わります。この手間を軽くしておくことが、フリーランスとして続けるための次の一歩になります。
自分でやる範囲を、仕組みとAIで軽くする
フリーランスになると、記帳や確定申告、保険の切り替えといった事務が毎年ついて回ります。売上を上げることと同じくらい、この事務を回せるかどうかが、続けられるかを左右します。
会計ソフトで売上と経費を自動で記録する。請求書の発行を仕組みにする。領収書の読み取りや帳簿の突き合わせをAIに任せる。こうして手数を減らしておくと、確定申告の時期に慌てずにすみます。
独立の前に、国民年金と国民健康保険への切り替え、開業届の準備、労災の特別加入を検討するかどうかを、一度に洗い出しておくと安心です。自由に働くための土台は、この地味な準備の先にできあがります。
よくある質問
フリーランスになると、手取りは増えますか。 報酬の額が同じでも、単純には比べられません。会社員は社会保険料の半分を会社が負担しますが、フリーランスは全額を自分で払います。いっぽうで、フリーランスは事業のための出費を経費にできる幅があります。額面だけでなく、保険料と経費まで含めて見てください。
フリーランスは、将来の年金が少なくなりますか。 会社員は厚生年金が国民年金に上乗せされますが、フリーランスは国民年金だけになります。そのため、受け取る年金は会社員より少なくなりやすいといえます。国民年金基金やiDeCoで、自分で上乗せを用意する方法もあります。
フリーランスでも失業手当をもらえますか。 原則として、もらえません。失業手当(雇用保険の基本手当)は、雇われて働く労働者のための給付だからです。雇用関係のないフリーランスは、雇用保険の対象外とされています。
フリーランスも労災保険に入れますか。 2024年11月から、企業などから業務委託を受けるフリーランスは、業種や職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。任意の制度で、加入するかどうかは自分で決め、保険料も自分で負担します。
会社員が副業でフリーランスの仕事をしたら、確定申告は必要ですか。 給与以外の所得が年20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になるのが目安とされています。20万円以下でも、住民税の申告が別に必要になることがあります。金額の線引きは、国税庁や市区町村の案内で確認してください。
まとめ
フリーランスと会社員の違いは、雇用契約か業務委託かにあります。雇われて働くか、仕事ごとに契約して働くか。税金と保険の違いは、すべてこの分かれ目から生まれます。
税金では、会社員が源泉徴収と年末調整で精算されるのに対し、フリーランスは自分で確定申告します。保険では、会社員の厚生年金と健康保険が会社との折半なのに対し、フリーランスの国民年金と国民健康保険は全額自己負担です。
働けないときや仕事を失ったときの備えも変わります。会社員は雇用保険と労災に守られますが、フリーランスは雇用保険の対象外で、労災は任意の特別加入になります。
フリーランスの自由は、税金と保険を自分でやる手間と引きかえに手に入ります。独立を考えるなら、その範囲を先に知り、事務を軽くする準備から始めてください。
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