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損益分岐点の計算|固定費と変動費に分けて出す

personスモゼミ編集部 event2026-07-24 公開
損益分岐点の計算|固定費と変動費に分けて出す

事業を続けていくと、「あと少しで黒字なのか、それともまだ遠いのか」を、感覚ではなく数字で確かめたくなる場面が出てきます。その目印になるのが損益分岐点で、売上と費用がちょうど釣り合い、利益がゼロになる点のことです。

公式は難しく見えるかもしれませんが、やることはひとつだけです。費用を固定費と変動費の2つに分けて、割り算をする。ただそれだけで、自分の事業の分岐点が数字で見えてきます。一度手を動かせば、次からは同じ手順をなぞるだけです。

この記事は、損益分岐点を「実際に計算する手順」に絞ります。損益分岐点とは何か、どう捉えて意思決定にどう使うか、いくら売れば赤字を抜けるかという考え方の側は損益分岐点の考え方にまとめてあります。ここでは、費用を固定費と変動費に分け、式に当てはめて答えを出すところに徹します。数字が苦手でも追えるよう、明らかに仮の数字を使いながら、ひとつずつ進めます。

この記事の要点

  • 損益分岐点の計算は、まず費用を固定費(売れなくてもかかる)と変動費(売れた量に応じて増える)に分けるところから始まります。この分け方が計算の土台です。
  • 式は2通りです。売上高で出すなら固定費÷(1−変動費率)、個数で出すなら固定費÷1個あたりの限界利益(単価−1個あたりの変動費)です。どちらも同じ点を見ています。
  • 固定費・変動費の分け方に迷う費用は、売上がゼロの月でもかかるかどうかで判断します。ひとり事業では、自分の取り分(生活費)を固定費に入れ忘れないことが大切です。
  • 目標の利益を残したいときは、固定費に目標利益を足して割るだけです。損益分岐点の計算に、ほしい利益を上乗せする形で逆算できます。

まず費用を固定費と変動費に分ける

損益分岐点を計算するには、費用を固定費と変動費の2つに分けておく必要があります。この区別ができていないと、式に当てはめる数字が用意できません。逆に言えば、ここさえ分けられれば、あとは割り算だけです。

  • 固定費は、売れても売れなくても、毎月ほぼ一定でかかる費用です。事務所の家賃、通信費、ツールやソフトの月額、保険料などが当てはまります。売上がゼロの月でも出ていく費用、と考えると見分けやすくなります。
  • 変動費は、売れた量に応じて増える費用です。材料費、仕入れ、外注費、決済手数料、送料などが当てはまります。1個も売れなければ、その分はかかりません。

計算に入る前に、手元の費用を紙か表計算ソフトに書き出し、それぞれ固定費か変動費かの印をつけてみてください。この一覧ができれば、固定費の合計と、売上に対する変動費の割合という、計算に必要な2つの数字が手に入ります。

なお、率で捉えて原価や粗利を設計していく話は原価・粗利率の設計にゆずり、ここでは分岐点を出すことに集中します。

損益分岐点を計算する|2つの式

損益分岐点は、売上高(金額)で出す方法と、販売数(個数)で出す方法の2通りがあります。同じ点を、金額で見るか個数で見るかの違いです。

損益分岐点の売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率) 損益分岐点の販売数 = 固定費 ÷ 1個あたりの限界利益(単価 − 1個あたりの変動費)

「変動費率」は、売上に対して変動費が占める割合(変動費 ÷ 売上高)です。「1個あたりの限界利益」は、単価から1個あたりの変動費を引いた、1個売るごとに手元に残る額のことです。言葉が増えて見えますが、どちらも「固定費を、1回の販売で回収できる力で割る」という同じ発想です。

仮の数字で追ってみます。固定費が月30万円、単価が1万円、1個あたりの変動費が6,000円の事業を考えます。

まず個数で出します。1個あたりの限界利益は、1万円 − 6,000円で4,000円です。この4,000円で固定費30万円を割ると、30万円 ÷ 4,000円で75個になります。月に75個売れたところで、売上と費用がちょうど釣り合います。

次に売上高で出します。変動費率は、6,000円 ÷ 1万円で0.6(60%)です。1 − 0.6は0.4なので、30万円 ÷ 0.4で75万円になります。先ほどの75個に単価1万円をかけると75万円ですから、2つの式の答えは一致します。

75個の前後で何が起きているかを表にすると、切り替わりが見えてきます。

販売数売上(単価1万円)変動費(1個6,000円)固定費利益
60個60万円36万円30万円−6万円(赤字)
75個75万円45万円30万円0円(損益分岐)
90個90万円54万円30万円+6万円(黒字)

75個を境に赤字から黒字へ変わっています。75個を超えた分は、1個売るごとに限界利益の4,000円がそのまま利益に積み上がります。90個なら、超えた15個分の4,000円で6万円の利益です。数字を自分の事業のものに置きかえれば、同じ手順で分岐点が出せます。

配線が伸びるサーバーラック

迷いやすい費用の分け方

書き出してみると、固定費か変動費か迷う費用が必ず出てきます。ここは厳密さより、判断の基準を決めておくことが大切です。

  • 水道光熱費・通信費 … 多くのひとり事業では、売上に関係なくほぼ一定なので固定費に寄せて考えます。製造で電気を大量に使うなど、明らかに売上に比例して増える部分があれば、その分だけ変動費に分けます。
  • 外注費 … 1件の仕事ごとに発注するものは変動費です。売上に関係なく毎月払う顧問料のような契約なら、固定費に入れます。
  • 決済手数料・送料 … 売れた分だけかかるので変動費です。売上に比例する典型なので、変動費率に含めます。
  • 自分の取り分(生活費) … ひとり事業で最も抜け落ちやすい費用です。多くの場合、生活に必要な額を固定費として先に確保しておくと計画が立てやすくなります。これを入れずに計算すると、分岐点を低く見積もってしまいます。

迷ったときの目安は、売上がゼロの月でもかかるかどうかです。かかるなら固定費、かからないなら変動費と分けます。どうしても線引きが難しい費用は、固定費に寄せて厳しめに見ておくと、分岐点が高めに出て、計画が甘くなりにくくなります。分け方は一度決めたら、毎月同じ基準でそろえると、月ごとの比較がしやすくなります。

目標利益を足して「いくら売れば残るか」を計算する

損益分岐点は利益ゼロの点でしたが、実際には「これだけは利益を残したい」という目標があるはずです。その場合も、計算はほとんど同じです。固定費に目標利益を足して、同じように割るだけです。

目標利益を残す売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率) 目標利益を残す販売数 =(固定費 + 目標利益)÷ 1個あたりの限界利益

先ほどの例(固定費30万円・単価1万円・変動費6,000円・限界利益4,000円)で、月20万円の利益を残したいとします。固定費30万円に目標利益20万円を足すと50万円です。

個数なら、50万円 ÷ 4,000円で125個。売上高なら、50万円 ÷ 0.4で125万円になります。分岐点の75個・75万円に、目標利益ぶんの上乗せ(50個・50万円)が加わった形です。

このように、損益分岐点の計算に目標利益を足すだけで、「いくら売れば、ほしい利益が残るか」まで数字で見えてきます。目標が「売上いくら」ではなく「あと何個」に変わると、今日の一歩を決めやすくなります。目標をどう置き、この数字をどう意思決定に使うかという考え方は損益分岐点の考え方に、目標利益から売上や費用を逆算して計画に落とす手順は利益計画の立て方にゆずります。

なお、ここで出るのはあくまで利益の話で、手元の現金とは別ものです。利益が出ていても現金が足りなくなることはあり、その仕組みは黒字倒産を防ぐにまとめてあります。

AI時代の応用・次の一歩

損益分岐点は式が単純なので、生成AIを使った試算と相性のよい題材です。前提の数字を渡せば、条件を変えたときの分岐点をまとめて出しやすくなります。

たとえば「固定費30万円、単価1万円、変動費6,000円のとき、損益分岐点は何個か。月20万円の利益を残すには何個必要か」と投げると、個数と売上高の両方をそろえて返してくれます。「固定費を24万円に下げた場合」「単価を9,000円にした場合」と条件を並べて比べるのも、式が単純なぶん素早く試せます。費用の一覧を渡して、固定費か変動費かの仕分けを下書きしてもらう使い方もあります。

ただし、気をつけたい点があります。AIが出す分岐点は、渡した前提の数字が正しいという仮定の上に成り立っています。固定費に入れ忘れた費用があったり、自分の取り分を計算に含めていなかったりすれば、答えも実態からずれます。費用を固定費と変動費に正しく分け、その数字が自分の帳簿と合っているかを確かめるのは、人の側の仕事です。計算はAIに任せ、前提の正しさは自分で引き受ける、と分けて考えると、地に足のついた使い方になります。

次の一歩として、まずは手元の費用を書き出し、固定費と変動費に分けて、この記事の式に当てはめてみてください。一度計算すれば、自分の分岐点が数字で見えてきます。

よくある質問

損益分岐点は、どの式で計算しますか。 2通りあります。売上高で出すなら、固定費÷(1−変動費率)です。個数で出すなら、固定費÷1個あたりの限界利益(単価−1個あたりの変動費)になります。どちらも同じ点を、金額で見るか個数で見るかの違いです。

固定費と変動費は、どう見分けますか。 売れても売れなくても毎月ほぼ一定でかかるものが固定費、売れた量に応じて増えるものが変動費です。家賃やツールの月額は固定費、材料費や決済手数料は変動費にあたります。迷ったときは、売上がゼロの月でもかかるかどうかで分けると考えやすくなります。

目標の利益を残すには、いくら売ればいいですか。 固定費に目標利益を足した額を、限界利益率(または1個あたりの限界利益)で割ります。固定費30万円・目標利益20万円・限界利益率40%なら、50万円÷0.4で125万円が必要な売上になります。損益分岐点の計算に、目標利益を足すだけです。

自分の取り分(生活費)は、どちらに入れますか。 多くの場合、固定費として先に確保しておくと計画が立てやすくなります。ひとり事業では自分の取り分が抜け落ちやすく、これを固定費に入れずに計算すると、分岐点を低く見積もってしまいます。生活に必要な額を固定費に含めて計算するのが目安です。

まとめ

損益分岐点の計算は、まず費用を固定費と変動費に分けるところから始まります。固定費は売れなくてもかかるもの、変動費は売れた量に応じて増えるものです。この分け方さえできれば、あとは割り算だけです。

式は2通りあります。売上高で出すなら固定費÷(1−変動費率)、個数で出すなら固定費÷1個あたりの限界利益(単価−1個あたりの変動費)です。固定費30万円・単価1万円・変動費6,000円なら、限界利益は4,000円で、分岐点は75個・75万円になります。目標の利益を残したいときは、固定費に目標利益を足して同じように割るだけで、必要な売上や個数が出ます。

分け方に迷う費用は、売上がゼロの月でもかかるかどうかで判断し、どうしても難しければ固定費に寄せて厳しめに見ておくと計画が甘くなりにくくなります。ひとり事業では、自分の取り分を固定費に入れ忘れないことが大切です。一度この手順で計算すれば、自分の事業の分岐点が数字で見えてきます。

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