自分と似たことをしている人が、すぐ近くにいる。そう気づいたとき、気になって相手のサイトを眺めるものの、何をどう見ればよいか分からないまま閉じてしまう。競合調査は、そうやって手が止まりやすい作業です。
競合調査とは、同じお客さんを取り合う相手が、誰に何をどう売っているのかを調べて、自分の立ち位置を決める材料にすることです。勝ち負けを決めるためではなく、相手が埋めている場所と、まだ空いている場所を見分けるために行います。
この記事では、誰が競合なのかの見分け方から、何を・どう調べ、集めた情報をどう整理するかまでを順に解説します。ひとり事業向けに、身の丈で数社を深く見る進め方を前提にしています。
自分の売りそのものを決める発想法は、この記事では扱いません。まず「相手を正しく調べる」ことに絞り、そこから見える空きの活かし方は別の記事に渡します。
この記事の要点
- 競合には、同じものを売る直接競合と、別の手段で同じ困りごとを解決する間接競合があります。間接競合を見落とすと、調査の範囲がずれます。
- 調べる項目は、提供物・価格帯・客層・強みと弱み・打ち出し方の5つに絞ると、相手ごとに同じものさしで比べられます。
- 調べ方は、公式サイト・SNS・口コミに加え、可能なら客として体験してみること。数を追わず、数社を深く見るのがひとり事業向きです。
- 集めた情報は一覧表にして並べます。目的は勝ち負けの判定ではなく、自分がどこで選ばれるかを見つけることにあります。
誰が競合かを、直接と間接に分けて考える
競合調査でつまずきやすいのは、そもそも誰を調べるかがずれている点です。競合は、直接競合と間接競合の2種類に分けて考えると整理しやすくなります。
直接競合は、同じお客さんに、同じようなものを売っている相手です。同じ地域の同業や、同じジャンルのサービスがこれにあたります。多くの人が競合と聞いて思い浮かべるのは、こちらでしょう。
間接競合は、売っているものは違っても、お客さんの同じ困りごとを別の手段で解決している相手です。たとえば「片づけが進まない」という悩みに対して、片づけ代行と、収納グッズの通販と、片づけ術の動画は、手段が違うだけで同じ困りごとを奪い合っています。ここを見落とすと、目の前の同業だけを見て、本当の選択肢を見誤ります。
間接競合を見つけるコツは、お客さんの側に立つことです。もし自分に頼まなかったら、その人は代わりに何を選ぶだろうか。そう考えると、同業以外の選択肢が浮かんできます。誰に向けて調べるのかがぼやけていると、この線引きも甘くなるので、ターゲット設定で相手を絞ってから調べると精度が上がります。
何を調べるか、5つの項目にそろえる
相手が決まったら、次は何を見るかです。思いつくまま眺めると、相手ごとに見る場所がばらつき、あとで比べられなくなります。調べる項目を先にそろえておくと、同じものさしで並べられます。
| 調べる項目 | 具体的に見るところ |
|---|---|
| 提供物 | 何を売っているか。サービスの範囲、対応する内容 |
| 価格帯 | いくらか。料金の見せ方、安いか高いか |
| 客層 | 誰に向けているか。年齢層、業種、困りごとの種類 |
| 強みと弱み | 何が売りか。逆に手が届いていないところはどこか |
| 打ち出し方 | どんな言葉で伝えているか。前面に出しているメッセージ |
とくに見落としやすいのが、右端の打ち出し方です。同じサービスでも、「速さ」を売る相手と「丁寧さ」を売る相手では、選ばれる理由が違います。相手がどの言葉で前に出ているかを見ると、その業界で何が価値とされているかが見えてきます。
弱みの欄は、悪口を集めるためではありません。相手が手を広げていない範囲、対応が薄いところを書き留めておくと、あとで自分が入れる余地を探す手がかりになります。
どう調べるか、身の丈で数社を深く見る
項目が決まったら、実際の調べ方です。特別な道具は要りません。公開されている情報を、順に見ていきます。
まず公式サイトです。提供物と価格帯、打ち出し方は、たいていここに出ています。次にSNSは、普段の発信から客層や雰囲気、力を入れている部分が読み取れます。口コミやレビューは、相手の言い分ではなく、使った人の声が見える貴重な場所です。とくに不満の声には、相手の弱み、つまり自分が入れる余地がにじんでいます。
さらに踏み込めるなら、客として体験してみる方法があります。問い合わせてみる、無料の範囲を使ってみる、資料を取り寄せてみる。申し込みから対応までを一度たどると、サイトの文字だけでは分からない流れや温度が分かります。ただし相手の迷惑になる使い方は避け、通常の利用の範囲にとどめるのが前提です。
ここで大事なのは、数を追わないことです。ひとり事業の時間は限られています。直接競合を2〜3社、間接競合を1〜2社ほどに絞り、その数社を深く見るほうが、たくさんを浅くなでるより使える材料が残ります。
集めた情報を、一覧表にして並べる
調べたものは、頭の中に置かず、一覧表にして並べます。相手を縦に、さきほどの5項目を横に置くと、違いが一目で分かる比較表になります。
| 項目 | 競合A | 競合B | 自分 |
|---|---|---|---|
| 提供物 | 幅広く対応 | 一分野に特化 | (記入) |
| 価格帯 | 中くらい | 高め | (記入) |
| 客層 | 一般向け | 事業者向け | (記入) |
| 強み | 対応の速さ | 専門性 | (記入) |
| 打ち出し方 | 便利さ | 安心感 | (記入) |
表の右端に自分の欄を足すのがポイントです。相手だけを並べても、自分がどこにいるかは見えません。同じものさしで自分を書き込むと、どこが重なり、どこが空いているかが浮かびます。
この表を眺める目的は、勝ち負けの判定ではありません。全員がAの分野に集まっているなら、そこは混み合っています。逆に、誰も埋めていない列や、薄いままの行があれば、それが自分の入れる余地の候補になります。調べた情報から、こうして空いている場所が見えてくる。その空きを実際に探して自分の立ち位置に変える手順は、競合の空白の探し方で扱います。
なお、この調査はあくまで空きを見つけるためのものです。競合の売りをそのまま真似すると、同じ場所に並んでしまい、比べ方は価格しか残りません。真似ではなく、空いている場所を探す道具として使ってください。
AI時代の応用・次の一歩
競合調査の情報集めと整理は、生成AIと相性のよい作業です。複数のサイトの文章を貼り付けて、提供物・価格帯・打ち出し方の観点で要約させたり、口コミの束から不満の傾向を抜き出させたりすると、下ごしらえの時間を短くできます。さきほどの5項目を渡して、競合ごとに表の形へ整理させる使い方も向いています。
ただし、AIの出力を鵜呑みにするのは避けたほうがよいでしょう。AIは事実でない情報をもっともらしく書くことがあり、価格や対応範囲を誤って要約する場合もあります。数字や具体的な条件は、必ず元の一次情報にあたって確かめてください。また、相手の弱みや空いている場所をどう読むかは、その業界を知る人の判断が要ります。AIは材料をそろえる役、意味を読み取るのは自分の側、と分けて使うのが安全です。
次の一歩として、まずは直接競合を2〜3社選び、5項目の表を一枚うめてみてください。その表から空きを探す進め方は競合の空白の探し方へ、そもそも何を自分の売りにするかはUSP・差別化へと進めます。
よくある質問
競合調査は何社くらい調べればよいですか。 数を追うより、数社を深く見るほうが向いていると考えられます。ひとり事業は使える時間が限られるため、直接競合を2〜3社、間接競合を1〜2社ほどに絞り、提供物や打ち出し方まで踏み込んで観察するほうが、材料として使えるものになりやすいです。
直接競合と間接競合は、どう見分けますか。 同じ相手に同じものを売っているのが直接競合、別の手段で同じ困りごとを解決しているのが間接競合になります。お客さんが自分に頼まないとき、代わりに何を選ぶかを考えると、見落としがちな間接競合が見えてきます。
競合を調べると、真似になってしまいそうで不安です。 調査の目的が真似であれば、そのとおりになりかねません。競合調査は、同じ場所に並ぶためではなく、まだ誰も埋めていない空いている場所を見つけるために行うものです。調べた違いを、自分がどこで選ばれるかの材料として使う姿勢が土台になります。
実際に客として競合を利用してもよいのですか。 公開されている範囲であれば、客として体験してみるのは有効な調べ方のひとつです。申し込みから対応までを一度たどると、サイトだけでは分からない流れや雰囲気がつかめます。ただし相手の迷惑になる使い方は避け、あくまで通常の利用の範囲にとどめるのが前提です。
まとめ
競合調査とは、同じお客さんを取り合う相手が、誰に何をどう売っているのかを調べて、自分の立ち位置を決める材料にすることです。まず、同じものを売る直接競合と、別の手段で同じ困りごとを解決する間接競合を分けて、調べる相手を定めます。
調べる項目は、提供物・価格帯・客層・強みと弱み・打ち出し方の5つにそろえます。公式サイトやSNS、口コミに加え、可能なら客として体験してみると、文字だけでは見えない部分がつかめます。数を追わず、数社を深く見るのがひとり事業向きです。
集めた情報は、自分の欄を足した一覧表にして並べます。目的は勝ち負けの判定ではなく、混み合っている場所と、まだ空いている場所を見分けること。真似のためではなく、空きを見つけるための調査だと心に留めておいてください。
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