USPを作ろうとすると、多くの人は最初の一歩で止まります。強みを書こうとして手が止まり、結局「丁寧な対応」と書いて先へ進めない。止まるのは、頭の中だけで完成品を作ろうとしているからです。
USP(Unique Selling Proposition)は、競合ではなく自分を選ぶ理由になる、独自の強みのことです。定義や良し悪しの見分け方はUSPとは何かで解説しているので、この記事は作り方だけに絞ります。
この記事では、USPを1文で作るまでの手順と、作った1文が本当にUSPになっているかを確かめる方法を解説します。
USPは、ひらめきで一発で出すものではありません。3つの材料を書き出して、その重なりを探す作業です。材料さえ紙に出せば、あとは重なりを見つけて1文にするだけになります。
この記事の要点
- USPは、ターゲットの悩み・競合の提供・自分の強みの3つを書き出し、その重なりから作ります。ひらめきで探しません。
- 重なりとは「相手が欲しい×競合が埋めていない×自分ができる」の3つがそろう1点です。どれか1つでも欠けるとUSPになりません。
- 重なりが見つかったら「〇〇な人に、△△を届けられる」という1文にします。言葉を磨くのは、そのあとです。
- 良いUSPかどうかは、具体的か・競合と違うか・相手に価値があるか、の3つで確かめます。
- 「否定形テスト」が便利です。逆を掲げる競合がありえない言葉は、当たり前であってUSPになりません。
USPを作る5つのステップ|全体像
USPは、3つの円が重なる1点を言葉にしたものです。相手が欲しいもの、競合が埋めていないもの、自分ができるもの。この3つを別々に書き出してから重ねると、探すべき場所がはっきりします。
| 順番 | やること | 書き出す材料 |
|---|---|---|
| ステップ1 | ターゲットが欲しいもの・悩みを書く | 相手の状況 |
| ステップ2 | 競合が提供していることを書く | 同業の打ち出し |
| ステップ3 | 自分の強みを書く | 自分の経験・技能 |
| ステップ4 | 3つの重なりを探す | 上の3つの関係 |
| ステップ5 | 重なりを一文にする | ステップ4の結果 |
3つの材料は、順番に書き出してください。相手の悩みが先にあると、自分の強みのうちどれが使えそうかを見当づけやすくなります。逆に自分の強みから書き始めると、相手が求めていない強みまで並べてしまいがちです。
ステップ1|ターゲットが欲しいもの・悩みを書き出す
最初に書くのは、自分のことではなく相手のことです。相手が何に困り、何を得たいのかが分からないと、あとで強みを重ねる先がなくなります。
次の問いに答える形で、思いつくだけ書き出してください。ここでは、確定申告のやり方を教える事業を例にします。
| 問い | 記入例 |
|---|---|
| どんな場面で困っているか | 開業したばかりで、確定申告のやり方が分からない |
| 何を得たいか | 間違えずに申告を終えて、本業に戻りたい |
| 今はどうやって済ませているか | ネット記事を読むが、自分の場合に当てはまるか不安 |
| 何が不満か | 一般論ばかりで、自分の業種の例が出てこない |
コツは、「何が欲しいか」だけでなく「今の済ませ方の何が不満か」まで書くことです。不満のところに、競合が埋めていない隙間が隠れています。この例なら「自分の業種の例が出てこない」が、あとで重なりの手がかりになります。
相手がまだぼやけていて、悩みを具体的に書けないなら、材料が足りていません。ターゲット設定ガイドで場面を1つに絞り、ターゲットの絞り込み方で困りごとを言葉にしてから、ここへ戻ってください。
ステップ2|競合が提供していることを書き出す
次は、同じ相手を狙っている競合が、すでに何を提供しているかを書きます。ここを飛ばすと、競合と同じことを自分の強みだと思い込んだまま先へ進んでしまいます。
競合には、同業だけでなく「相手が今使っている代わりの手段」も入れてください。無料の記事も、会計ソフトも、相手にとっては競合です。
| 競合 | 提供していること | 打ち出している言葉 |
|---|---|---|
| 税理士事務所 | 申告の代行 | 正確・安心 |
| 会計ソフト | 入力の自動化 | だれでも使える |
| 無料の解説記事 | 一般的な手順の説明 | 網羅的でくわしい |
書けたら、「この人たちが埋めていないものは何か」を1つ探します。この例では、どの競合も「業種ごとの具体例で教える」ことはしていません。代行は答えを出すだけ、ソフトは入力を助けるだけ、記事は一般論だけ。ここに隙間があります。
ステップ3|自分の強みを書き出す
3つ目に、自分が持っているものを書きます。強みは「人よりうまいこと」で探すと出てきません。「人より苦にならないこと」「何度も通ってきた場面」で探すと見つかります。
| 種類 | 問い | 記入例 |
|---|---|---|
| 経験 | 何度も通ってきた場面はあるか | フリーランスとして自分で何度も申告してきた |
| 技能 | 苦にならず、人より速くできる作業は | 数字の整理と、むずかしい話をかみ砕く説明 |
| 資源・人脈 | 持っている道具・つながりは | 同じ業種の知り合いが多い |
強みが思い浮かばないときは、書き出す前から「ない」と決めているだけのことが多いものです。過去を年表にして棚おろしする手順は強みの棚卸しのやり方にあります。ここでは、あとで重ねられる粗い候補がいくつか出ていれば十分です。
ステップ4|3つの重なりを探す
材料がそろったら、強みの候補を1つずつ、3つの問いにかけます。相手が欲しいか。競合が埋めていないか。自分ができるか。3つとも「はい」になる候補が、USPのもとになります。
| 強みの候補 | 相手が欲しいか | 競合が埋めているか | 自分ができるか | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 業種別の例つきで申告を教える | 欲しい | 埋めていない | できる | 重なる |
| 料金が安い | 欲しい | 競合も安い | できる | 競合とかぶる |
| 会計理論にくわしい | あまり求めていない | ― | できる | 相手が要らない |
3列がそろわない候補は、外します。「安い」は相手が欲しくても競合も埋めているので、選ぶ理由になりません。「会計理論にくわしい」は自分ができても、相手が求めていません。残るのは、3列そろった「業種別の例つきで教える」です。
重なる候補が1つも出ないときは、強みそのものを増やすより、届ける相手を狭めてみてください。「安い」でかぶっても、「開業したての同業だけに」と絞ると、まねしにくい形に変わることがあります。
ステップ5|重なりを一文にする
最後に、残った重なりを1文にします。次の型に当てはめてください。
「〇〇な人に、△△を届けられる」
例に当てはめると、こうなります。
「開業したての同業に、自分の業種の例で確定申告のやり方を教えられる」
この段階では、言葉の見栄えは気にしません。キャッチコピーとして磨くのは、もっとあとの作業です。ここで作るのは、集客の言葉や値付けを考えるときに立ち返る、判断の土台になる1文です。言葉を短く言い切る形に磨く段階は、この1文が決まってからで間に合います。
良いUSPかを確かめる|否定形テスト
1文ができても、それがUSPになっているとは限りません。書けた1文を、3つの問いで確かめてください。
- 具体的か。誰が読んでも同じ絵が浮かぶか。
- 競合と違うか。同業がそのまま言えてしまわないか。
- 相手に価値があるか。相手がお金を払ってでも欲しいか。
この3つを1つの操作で確かめられるのが、否定形テストです。書いた言葉の逆を掲げる競合が、現実にありえるかを考えます。
| 書いた言葉 | 否定した形 | 逆を掲げる競合は | 判定 |
|---|---|---|---|
| 業種別の例で教える | 業種の例は出さない | ありうる | 中身がある |
| 丁寧に教える | 雑に教える | ありえない | 当たり前で中身がない |
| 安心して任せられる | 不安なまま任せる | ありえない | 当たり前で中身がない |
「丁寧」「安心」は、逆を掲げる競合がいません。誰も逆を言わない言葉は、言い換えれば全員が同じことを言っている言葉です。それは当たり前であって、選ぶ理由にはなりません。一方「業種別の例で教える」は、「うちは一般論だけ」と割り切る競合がありえます。逆がありうるからこそ、選ぶ理由になります。
否定形が成り立たないと分かったら、その言葉は外して、ステップ4の表に戻ります。心構えを並べてもUSPにはならないので、3列そろった別の候補を探し直してください。
AIで重なりの候補を洗い出す|応用と次の一歩
3つの材料を書き出す作業は、AIに手伝わせると速くなります。ただし、最後に選ぶのは自分です。
たとえば、ステップ2の競合とステップ1の悩みを、AIにまとめて出させることができます。「〇〇(自分の事業)の競合が提供していることと、相手がよく抱く悩みを、それぞれ10個ずつ挙げてください」と頼むと、自分では思いつかなかった競合や悩みが出てきます。抜けを埋める使い方です。
さらに、書き出した3つの材料を貼りつけて、「この3つが重なる点の候補を挙げてください」と続けると、重なりの案をいくつか返します。案の中から、自分が本当に続けられるものを選ぶのは、AIではなく自分の仕事です。相手がお金を払うかどうか、自分が半年後も続けられるかどうかは、事業を営む本人にしか判断できません。
作った1文が、なぜ値段の理由になるのかまで踏み込みたいなら、価値で選ばれるへ進んでください。USPが決まると、価格を安さで競わなくてよい理由が見えてきます。
よくある質問
USPを作る前に、何が決まっていればいいですか。 「誰に売るか」がざっくり決まっていれば始められます。相手の悩みが書けないと、ステップ1で手が止まるからです。相手がまだぼやけているなら、先にターゲット設定ガイドで場面を1つに絞ってから戻ってください。強みや商品の案がそろっていなくても、書き出しながら探せます。
強みが特にないと感じるときは、どうすればいいですか。 強みは、人よりうまいことではなく、人より苦にならないことから探すと見つかります。速くできる作業、何度も通ってきた場面、続けてこられたこと。この3つを書き出すと候補が出ます。手順は強みの棚卸しのやり方にあります。書き出す前から「ない」と決めてしまうと、重なりを探す材料がそろいません。
競合と全部かぶってしまう場合は、どう考えればいいですか。 同じ強みでも、届ける相手を狭くすると重ならなくなります。「安い」は競合とかぶりますが、「開業したての同業だけに、その業種の例で教える」まで絞ると、まねしにくくなります。強みそのものより、誰に向けるかで違いを作れないかを先に探してください。
作ったUSPは、あとから変えてもいいですか。 変えて構いません。売ってみた反応を見て、相手が求めていなかったと分かることはよくあります。ただし変えるのは、思いつきではなく反応を見てからにしてください。1文を書いておくと、どこがずれていたのかを切り分けられます。書いていないと、直す場所も分かりません。
まとめ
USPは、ひらめきで一発で出すものではありません。ターゲットの悩み、競合の提供、自分の強み、この3つを別々に書き出して、重なりを探す作業です。材料を紙に出せば、探す場所ははっきりします。
重なりとは「相手が欲しい×競合が埋めていない×自分ができる」の3つがそろう1点です。どれか1つでも欠けたら、選ぶ理由にはなりません。3列そろった候補を「〇〇な人に、△△を届けられる」という1文にすれば、粗いUSPはできあがります。
できた1文は、否定形テストで確かめてください。逆を掲げる競合がありえない言葉は、当たり前であってUSPになりません。「丁寧」「安心」で止まっていたら、3列そろう別の候補に差し替えます。
言葉の見栄えは、あとから磨けます。まずは3つの材料を書き出して、重なりを1文にするところまで、手を動かしてみてください。
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- 強みの棚卸しのやり方 — ステップ3の材料を、過去から掘り出したい方へ
- ターゲット設定ガイド — ステップ1の相手を、場面まで絞り込みたい方へ
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