原理・原則 経営戦略・事業計画 lock_open無料

消耗品モデルとは|本体を入口に、替え刃や補充で続けて稼ぐ形

personスモゼミ編集部 event2026-07-20 公開
消耗品モデルとは|本体を入口に、替え刃や補充で続けて稼ぐ形

髭剃りの本体は驚くほど安く手に入るのに、あとから買い足す替え刃は決して安くない。プリンターは思ったより手ごろでも、純正インクを何度も買っていると、いつのまにか本体の何倍もの額を払っている。こうしたことに、心当たりがあるかもしれません。

これは偶然ではなく、意図して組まれた形です。本体を安く売って入口を広げ、繰り返し必要になる消耗品で、あとから続けて利益を得る。「本体で釣って、消耗品で回収する」この仕組みが、消耗品モデルです。替え刃の商売で知られたことから、ジレットモデルと呼ばれることもあります。

この記事では、消耗品モデルとは何かという定義と、なぜ続けて稼げるのかという核を整理します。そのうえで、ひとり事業でどう応用できるか、囲い込みが嫌われない設計の勘どころまでを見渡します。いくらで本体を出し、消耗品でどう回収するかという価格・利益の組み立ては収益・価格・利益設計ガイドに譲り、ここでは「本体と消耗品」という商品構造そのものに絞ります。

この記事の要点

  • 消耗品モデル(ジレットモデル)とは、本体を安く売って入口を広げ、繰り返し要る消耗品で続けて利益を得る形です。「本体で釣って、消耗品で回収する」と言い換えられます。
  • 核は、一度本体を持つと、消耗品はその人から繰り返し売れる点です。最初の障壁を下げて入ってもらい、あとで積み上げます。
  • ひとり事業でも、本体と消耗の組み合わせを作れる商売なら応用できます。コーヒー器具と豆、道具と補充材料、会員証と継続サービスなど、定期便とも相性が良い形です。
  • 勘どころは、消耗品が「その本体でしか使えない」「自分から買うのが自然」になっているか。ただし囲い込みが強すぎると嫌われるため、納得できる価値を保つことが前提になります。

消耗品モデルとは、本体を入口に消耗品で回収する形

消耗品モデルとは、本体(機器や器具)を安く、ときには利益が出ないほどの価格で売って入口を広げ、その本体を使うために繰り返し必要になる消耗品や補充品で、続けて利益を得る仕組みのことです。

わかりやすいのが、髭剃りです。持ち手にあたる本体は手ごろな値段で、しかも替え刃が一つ付いてきます。ところが刃は使ううちに切れ味が落ちるので、定期的に替え刃を買い足すことになります。本体を一度手にした人は、以後ずっとその替え刃を買い続ける。売り手から見れば、本体はいわば入口で、本当の稼ぎは繰り返し売れる替え刃のほうにある、という組み立てです。

同じ発想は、身のまわりの多くの商品に見られます。プリンター本体とインク、コーヒーマシンと専用カプセル、電動歯ブラシと替えブラシ。いずれも「一度買ったら終わり」ではなく、本体を持っている限り消耗品を買い続ける関係が生まれています。ジレットモデルと呼ばれるのは、この形を替え刃の商売が広く知らしめたことにちなむとされています。

大事なのは、本体を安くすること自体が目的ではない、という点です。安くするのは、入口の障壁を下げてより多くの人に入ってもらうためであり、回収はそのあとの消耗品でおこなう。この二段構えが、このモデルの背骨になります。

なぜ続けて稼げるのか|入口を下げて、あとで積み上げる

このモデルの核は、一度本体を持った人からは、消耗品が繰り返し売れる、という一点にあります。ここを押さえると、なぜ本体を安くしてまで入口を広げるのかが見えてきます。

ふつう、新しいものを買ってもらうときの障壁は「最初のひとつ」です。値段が高いほど、買うかどうか迷われ、入口で取りこぼします。そこで本体を思い切って安くすると、この迷いが小さくなり、入ってくれる人が増えます。そして一度入ってもらえれば、あとは消耗品が自然に、しかも繰り返し売れていきます。最初の一回の売り上げではなく、その人が使い続けるあいだの積み重ねで元を取る、という時間軸の長い考え方です。

ふつうの売り切り消耗品モデル
入口の価格相応の価格をつける安くして障壁を下げる
稼ぎどころ売ったその一回繰り返し売れる消耗品
客との関係売って終わりになりやすい使い続ける限り続く
見るべき指標一回あたりの利益使い続ける期間の合計

ここで注意したいのは、本体を安くしただけでは成り立たない、という点です。安くして入口を広げても、そのあと消耗品が続けて売れなければ、本体で出た赤字を取り戻せません。回収できる見込みがあってはじめて、入口を下げる一手が生きます。だからこそこのモデルは、一回の取引ではなく、その人が使い続けるあいだ全体で採算を見る目が要ります。何回買ってもらえば元が取れるかという逆算の考え方は、収益・価格・利益設計ガイドで扱っています。

割れ物注意のテープで封をした段ボール箱

ひとり事業での応用|本体と消耗の組み合わせを作る

大がかりな機器がなければ使えない形に見えるかもしれませんが、そうではありません。「一度持つと、繰り返し要るものがある」という組み合わせを作れる商売なら、ひとり事業でも応用できると考えられます。

たとえば、次のような組み合わせが考えられます。

本体(入口)消耗品・補充(繰り返し)
コーヒーの器具・ドリッパー定期的に届ける焙煎した豆
手作りの石けん・容器中身の詰め替え・補充
道具・キット補充する材料・パーツ
会員証・登録続けて受けるサービスや教材

いずれも、最初に本体や入口にあたるものを手にしてもらい、そのあと消耗する部分を繰り返し届ける形です。本体を器具や道具に限る必要はなく、会員として登録してもらうことを入口に、続くサービスで回収する組み立ても、同じ発想の応用です。

この形は、定期的に届ける仕組みととても相性が良い形です。消耗品は使えばなくなり、また要るときが来ます。ならば、その都度買ってもらうのを待つのではなく、定期便として続けて届けるようにすると、双方にとって手間が減ります。定額で続けて課金する仕組みそのものはサブスクリプション・継続課金モデルの領分なので、消耗品モデルと重ねて使うと、続けて買ってもらう土台がさらに安定します。なお、本体も消耗品もどちらもものを作って売る点では、根っこは物販モデルにつながっています。

設計の勘どころ|「自分から買うのが自然」を保てるか

この形を成り立たせるうえで、最大の急所は、消耗品が「その本体でしか使えない」または「自分から買うのが自然」になっているかどうかです。ここが崩れると、モデル全体が崩れます。

考えてみると、本体を安くして入口を広げた分は、消耗品で回収するはずでした。ところが、その消耗品が他店でもっと安く手に入るなら、お客さんはそちらで買います。すると本体で下げた分を取り戻せず、入口を広げただけの赤字が残ります。だからこのモデルでは、消耗品が自分のところから買われ続ける状態を、どう保つかが問われます。専用の規格にする、品質で選ばれ続ける、届ける利便で勝る、といった形で、他に流れない理由が要ります。

ただし、ここで気をつけたいことがあります。他で買えないように縛る力が強すぎると、お客さんは「囲い込まれている」と感じ、嫌われます。純正品しか使えないうえに高い、といった状態が続けば、離れる動機になってしまいます。囲い込みそのものが目的化すると、長い目では選ばれなくなるのです。

だからこそ、縛りで閉じ込めるのではなく、納得できる価値で選ばれ続ける状態を目指すのが、地に足のついた設計です。専用だから仕方なく買うのではなく、品質や届け方が良いから自分から買う。この状態を保てているかを、折にふれて確かめる姿勢が要ります。加えて、入口を下げすぎて消耗品で回収しきれないと赤字になるため、どこまで本体を安くするかは、回収の見込みと必ずセットで決めます。

AI時代の応用・次の一歩

自分の商売を消耗品モデルに翻訳できないかを考えるとき、生成AIは発想を広げる相手として使えます。たとえば「この商品で、一度持つと繰り返し要る消耗品や補充にあたるものは何か、候補を挙げてほしい」と問いを投げると、自分では気づかなかった組み合わせが並ぶことがあります。本体と消耗品の対応を洗い出す下ごしらえに向いています。

ただし、鵜呑みにしないことが大切です。AIは一般論として整った組み合わせを出しますが、それが自分のお客さんにとって「自分から買うのが自然」なものかどうかは、別の話です。回収できる見込みがあるか、囲い込みが嫌われない範囲かは、数字と現場を知る自分にしか判断できません。AIの案は候補にとどめ、成り立つかどうかは自分で確かめる、という順序が現実的です。

次の一歩として、まず手元の商売で「一度持ってもらえば、繰り返し要るものは何か」を書き出してみてください。そこが消耗品にあたる部分です。そのうえで、続けて届ける仕組みはサブスクリプション・継続課金モデルへ、いくらで本体を出して消耗品でどう回収するかは収益・価格・利益設計ガイドへと進めます。

よくある質問

消耗品モデルとサブスクは同じものですか。 別のものです。サブスクは「定額を続けて払ってもらう課金の方式」そのものを指します。消耗品モデルは「本体と、繰り返し要る消耗品」という商品の組み立てで続けて買ってもらう形を指します。切り口が違うので、消耗品を定期便で届けるように、両方を重ねることもできます。

ひとり事業でも消耗品モデルは組めますか。 本体と消耗品の組み合わせを作れる商売なら応用できると考えられます。コーヒー器具と豆、道具と補充材料、会員証と継続サービスなど、一度持つと繰り返し要るものがあれば形になります。ただし本体を安くしすぎて消耗品で回収できないと赤字になるため、見込みを持って設計することが前提です。

本体はどれくらい安くすればいいですか。 一概には言えず、消耗品でどれだけ回収できるかから逆算します。本体を安くするほど入口は広がりますが、消耗品が続けて売れなければ回収できません。何回買ってもらえれば元が取れるかを見積もり、その範囲で本体の価格を決めるのが現実的です。具体的な価格の組み立ては価格設計の記事に譲ります。

消耗品を他店で安く買われると成り立ちませんか。 そこがこの形の弱点です。消耗品が「その本体でしか使えない」「自分から買うのが自然」になっていないと、消耗品だけ他で安く買われて回収が崩れます。ただし縛りを強くしすぎると嫌われるので、納得できる品質や利便で選ばれ続ける状態を保つことが要になります。

まとめ

消耗品モデル(ジレットモデル)とは、本体を安く売って入口を広げ、繰り返し必要になる消耗品で続けて利益を得る仕組みのことです。「本体で釣って、消耗品で回収する」と言い換えられます。核にあるのは、一度本体を持った人からは、消耗品が繰り返し売れるという一点です。最初の障壁を下げて入ってもらい、あとで積み上げます。

ひとり事業でも、本体と消耗の組み合わせを作れる商売なら応用できます。コーヒー器具と豆、道具と補充材料、会員証と継続サービスなど、続けて届ける仕組みと重ねると土台が安定します。

気をつけたいのは、消耗品が「その本体でしか使えない」「自分から買うのが自然」になっているかどうかです。他で安く買われると回収が崩れ、逆に囲い込みが強すぎると嫌われます。縛りではなく、納得できる価値で選ばれ続ける状態を保つこと、そして入口を下げすぎて回収しきれない赤字にならないよう、見込みを持って設計すること。この二つを押さえれば、消耗品モデルはひとりの商売でも続けて稼ぐ土台になります。

あわせて読みたい

無料登録で、学びを“あなた仕様”に

原理原則は、このまま登録なしで読めます。無料登録すると、続きの学びが記録・案内され、迷わず次に進めます。

◎ 気になる記事を保存◎ 次に読む記事を案内 ◎ 学習の進捗を記録
無料で登録する(カード不要)
すでに会員の方は ログイン

この記事と関連するコンテンツ

すべて見るchevron_right