「何か事業を始めたいけれど、これといった新しいアイデアがない」。独立や副業を考える人の多くが、ここで手を止めます。誰も思いつかない発明をしなければ、と気負うほど、案は出てこなくなります。
ただ、ひとり事業のアイデアは、大きな発明である必要はありません。すでにうまくいっている型を借りて、対象や地域、提供のしかたを少しだけずらす。この「マイナーチェンジ発想」なら、ゼロからひらめかなくても、現実的な案にたどり着けます。
この記事では、儲かっている手法のマイナーチェンジ発想を、やり方と、まね・差別化の境界という順で整理します。
なお、よそをそのまま丸ごとコピーするやり方はおすすめしません。あくまで一般的な事業のかたちを、自分の領域にずらして持ち込む考え方として読んでください。
この記事の要点
- ひとり事業のアイデアは、大きな発明でなくてかまいません。うまくいっている型をずらすほうが現実的です。
- ずらせる場所は、対象・地域・提供方法・切り口の4つ。1つ変えるだけでも、同じ型が別の事業に見えてきます。
- 同じ相手に同じものをそのまま出せば、それはまね。対象や中身をずらして自分の色を足せば、差別化に近づきます。
- まねてよいのは事業の型まで。商標やロゴ、独自のしくみを持ってくると、法律上の問題になることがあります。
- 迷ったら、自分がすでに強い分野に、よその型を1つだけずらして持ち込むところから始めてください。
マイナーチェンジ発想とは|うまくいっている型をずらす
マイナーチェンジ発想とは、すでに成り立っている事業の型を借りて、対象や提供のしかたを少し変え、自分の領域に持ち込む考え方です。ゼロから需要を作らなくてよいぶん、ひとりでも現実的に始められます。
なぜゼロから発明しなくていいのか
新しい事業ほど、そもそも需要があるかどうかがわかりません。誰も買ったことのないものは、売れる保証がないからです。
その点、すでに儲かっている型には、お金を払う人がいるという事実がすでにあります。需要が確かめられた土台の上で、少しだけ形を変える。この進め方なら、最も怖い「そもそも売れない」というリスクを小さくできます。
大きな発明で一発を狙うより、確かな型を借りて外すところを減らす。ひとり事業のように失敗が生活に届きやすい立場では、この堅さが効いてきます。
借りるのは「需要が確かめられた型」
ここで借りるのは、他社の名前でも中身でもありません。「こういう売り方だと人はお金を払う」という、事業のかたちだけです。
たとえば、月額で払い続けてもらう定額制。使いたいときだけ呼ぶ出張型。店に来てもらわずに届けるオンライン化。こうした型は、業種を問わず何度も成り立ってきました。だからこそ、自分の分野に持ち込む土台として使えます。
まねと差別化の境界はどこにあるか
境界は「同じ相手に、同じものを、同じやり方でぶつけるかどうか」にあります。まるごと同じならまね。対象か中身をずらせば、差別化の側へ近づきます。
そのままのコピーが「まね」になる
近所で人気の店と同じ品ぞろえ、同じ価格、同じ客層で、すぐ隣に出す。これはまねです。相手と同じ土俵に立つので、体力のあるほうが勝ちます。資本も人手も少ないひとり事業にとって、まっこうからの勝負は分が悪くなります。
さらに、名前やロゴ、独自のしくみまで似せると、後で述べる法律上の問題にもつながります。丸ごとのコピーは、勝ちにくいうえに危うい選び方です。
ずらして自分の色を足すと「差別化」になる
同じ定額制でも、相手を変える。同じ品でも、届け方を変える。同じサービスでも、売り文句を「速さ」から「ていねいさ」へ変える。こうして少しずらすと、よそと直接ぶつからない場所が生まれます。
差別化とは、まったく新しいことをする意味ではありません。確かな型に、自分だけのずらしを1つ足すこと。これがひとり事業に合った、無理のない差のつけ方です。
ずらせる4つの切り口|対象・地域・提供方法・切り口
ずらす場所は、大きく4つに分けられます。対象、地域、提供方法、切り口です。どれか1つを変えるだけでも、同じ型が別の事業に見えてきます。
対象をずらす
最も試しやすいのが、届ける相手を変えるやり方です。大人向けに広まった型を子ども向けに、法人向けのしくみを個人向けに置き換えます。
たとえば、ビジネスパーソン向けの学び直しサービスを、退職後の世代向けに作り直す。相手が変われば、悩みも予算も変わります。同じ型でも、まるで別の事業として立ち上がります。
地域をずらす
都市部で当たり前になった型が、地方ではまだ届いていない。その逆もあります。この時間差や場所の差を使うのが、地域のずらしです。
都会で普及したオンライン相談を、対面が中心の地域へ持ち込む。あるいは、地方で根づいた出張型のサービスを、共働きの多い都市部へ広げる。土地の事情に合わせて形を整えるだけで、先に始めた強みが生まれます。
提供方法をずらす
売るものは変えず、届け方だけを変えるやり方です。売り切りだったものを月額制に、店舗型を出張型に、対面をオンラインに置き換えます。
同じ知識やスキルでも、単発の相談を続けて受ける形にすると、毎月の収入になります。ひとり事業では、この「続く収入になるか」が事業の安定を大きく左右します。継続収入になりやすい形へずらせないかは、いつも考える値打ちがあります。
切り口をずらす
品もサービスも同じまま、見せ方や打ち出し方だけを変えるやり方です。「安さ」で売られてきたものを「安心」で売る。「速さ」が売りだった分野で「ていねいさ」を前面に出します。
同じことをしていても、どこを一番の売りにするかで、集まる相手は変わります。よそが値段で競っている場所こそ、別の切り口が空いていることが多いものです。
マイナーチェンジで気をつけたいこと
まねてよいのは、事業の型までです。商標として登録された名前やロゴ、独自のしくみ、宣伝の言い回しまで持ってくると、商標権や著作権の侵害になることがあります。
型を借りることと、中身をコピーすることは別ものです。「こういう売り方が成り立つ」という考え方は自由に使えますが、他社の作った具体的なものは使えません。名前も、見た目も、文章も、自分で作ってください。
もう1つ、実際より良く見せる打ち出しにも用心がいります。根拠のない「地域で一番」「業界最安」といった言い方は、景品表示法などにふれるおそれがあるとされています。ずらして差をつけるときも、事実に沿った言葉で伝えることが土台になります。
こうした線を越えなければ、うまくいっている型から学ぶこと自体は、ごく普通の事業の進め方です。安心して土台として使ってください。
AI時代の応用と次の一歩
うまくいっている型を集める作業は、AIに任せられます。人がやるのは、どの型を自分の領域へずらすかという選択です。この分け方が、ひとり事業でアイデアを回す近道になります。
たとえばAIに、自分がよく知る業種で成り立っている事業の形を挙げさせます。そのうえで、対象・地域・提供方法・切り口のどれをずらせそうかを、人が選びます。数を出すのはAI、選ぶのは人。役割を分けると、手が止まりにくくなります。
ただし、AIが挙げた案がそのまま当たるわけではありません。ずらした先に本当にお金を払う人がいるかは、別に確かめる必要があります。小さく試し、反応を見てから広げてください。やめる線を先に決めておくと、外れても立て直せます。
ここで作ったアイデアの種を、次は「誰に・何を・どのように」の形に磨いていきます。その進め方は事業コンセプト設計で解説しています。ずらした案がひとり事業に向くかどうかは、スモビジに向く事業アイデアの条件(小資本・在庫レス・継続収入)の4条件でも確かめられます。
よくある質問
まねと差別化の違いは何ですか。 同じ相手に、同じものを、同じやり方で出すのがまねです。対象や中身、見せ方をずらして自分の色を足すと、差別化に近づきます。境界は「よそと同じ土俵で戦うか、少し横にずれるか」で見分けます。
どこまでまねすると問題になりますか。 まねてよいのは事業の型までです。登録された商標やロゴ、独自のしくみ、宣伝の言い回しまで持ってくると、商標権や著作権の侵害になることがあります。名前と中身は自分で作ってください。
マイナーチェンジのアイデアはどうやって探しますか。 自分がよく知る業種で、すでに続いている事業を観察します。そのうえで、対象・地域・提供方法・切り口のどれかをずらせないかを考えます。AIに型を挙げさせ、人がずらし先を選ぶやり方も使えます。
うまくいっている型をずらしても、うまくいくとは限らないのでは。 限りません。型が確かでも、ずらした先に需要があるとは限らないからです。だからこそ小さく試し、反応を見てから広げます。やめる線を先に決めておくと、失敗が致命傷になりにくくなります。
ずらす切り口が多くて迷います。どれから試すべきですか。 まずは対象をずらすところから試すのがすすめやすいです。自分がすでに強い分野に、よその型を1つだけ持ち込むと、無理なく始められます。慣れてきたら地域や提供方法のずらしを重ねます。
まとめ
儲かっている手法のマイナーチェンジ発想は、ゼロから発明しない代わりに、確かな型を借りて少しずらす考え方です。需要が確かめられた土台に乗るぶん、ひとりでも外しにくくなります。
ずらせる場所は、対象・地域・提供方法・切り口の4つ。どれか1つを変えるだけでも、同じ型が自分の事業に姿を変えます。全部を一度に狙わず、まずは対象のずらしから始めると無理がありません。
まねと差別化の境界は、「同じ相手に同じものをそのまま出すか」で決まります。丸ごとのコピーは勝ちにくく、法律上の問題にもつながります。借りるのは型まで、中身は自分で作る。この線さえ守れば、うまくいっている事業から学ぶことは、ふつうの進め方です。
出したアイデアは、小さく試して反応を見てから広げてください。ひとり事業では、当てることより、外しても立て直せることのほうが大切です。
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