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デットとエクイティ|借りる資金と、渡して得る資金の違い

personスモゼミ編集部 event2026-07-20 公開
デットとエクイティ|借りる資金と、渡して得る資金の違い

事業のお金を自己資金以外から集めるとき、その手段は数多くあります。融資、出資、補助金、その他。ただ、一つひとつを覚える前に、もっと大きな二つの分け方を知っておくと、全体の見通しがぐっと立てやすくなります。

その大きな柱が、デットファイナンスとエクイティファイナンスです。少し耳慣れない言葉ですが、中身は難しくありません。片方は「借りて、あとで返す」お金。もう片方は「株式や持分を渡して、返さなくていい」お金です。世の中の資金調達は、突きつめるとこのどちらか、あるいはその組み合わせでできています。

この記事では、個々の制度の細かい話には立ち入らず、この二つの「性質の違い」に絞って解説します。返す義務があるのはどちらか、経営の自由はどう変わるのか、そして多くのひとり事業がなぜ片方に寄りやすいのか。その骨格をつかんでおくと、あとで個別の手段を調べるときにも、それがどちらの性質のものかがすぐ見分けられるようになります。

なお、融資・出資・補助金・その他といった手段の一覧そのものは資金調達の方法一覧で俯瞰しています。この記事は、その手前にある「二つの性質」の理解に集中します。

この記事の要点

  • 資金調達は、大きくデットファイナンス(借入)とエクイティファイナンス(出資)の二つに分けられます。ほとんどの手段は、このどちらかの性質を持っています。
  • デットは、お金を借りてあとで返す方法です。利息を払う義務はありますが、事業の所有権や経営権は自分のまま残ります。融資がこれにあたります。
  • エクイティは、株式・持分と引き換えにお金を得る方法です。返済の義務はありませんが、所有権や意思決定の一部を他者に渡すことになります。
  • 多くのひとり事業は、自分のペースで続けたい・所有権を手放したくないため、デット(借入)中心になりやすいと考えられます。どちらが良い悪いではなく、事業の目指す形で選ぶものです。

資金調達には、大きく二つの性質がある

自己資金だけでは足りないお金を外から集める方法は、性質で分けると二つに大別できます。デットファイナンスと、エクイティファイナンスです。

デットファイナンス(debt finance)の debt は「借金」を意味します。つまり、お金を借りて、あとで返す方法です。エクイティファイナンス(equity finance)の equity は「株式・持分」を意味します。こちらは、お金と引き換えに株式や持分を渡す方法です。

この二つを分ける根っこにあるのは、「返すのか、渡すのか」という違いです。デットは、借りたお金をいずれ返します。その代わり、事業そのものは自分のもののままです。エクイティは、お金を返さない代わりに、事業の一部(所有権や経営への発言力)を相手に渡します。返済という負担を取るか、事業の一部を渡すという負担を取るか。どちらにも、それぞれ違う形の「コスト」があるわけです。

世の中の調達手段は、たいていこのどちらかに当てはまります。融資はデット、ベンチャーキャピタルからの出資はエクイティ、といった具合です。だからこそ、まずこの二つの性質を押さえておくと、個別の手段を見たときに「これは借りて返す側か、渡す側か」と整理しやすくなります。

デットファイナンス(借入)とは、借りて返す資金

デットファイナンスは、お金を借りて、あとで返す資金調達です。ひとり事業で最も身近なのは、金融機関からの融資でしょう。借りたお金は、決められた期間のあいだに、利息をつけて返していきます。

デットの最大の特徴は、返済の義務がある代わりに、事業の所有権や経営権は自分のまま残るという点です。お金を貸した側は、あくまで「貸したお金を利息とともに返してほしい」立場であって、事業の経営に口を出したり、もうけの分け前を求めたりする立場ではありません。返す約束さえ守れば、事業を誰にどう回すかは、これまで通り自分で決められます。

言いかえると、デットは「コントロールを手放さずに資金を得る」方法です。返済の見通しさえ立てば、事業の舵を自分で握ったまま、必要な元手を用意できます。ひとりで、自分の考えた通りに事業を進めたい人にとって、この「経営の自由が保たれる」性質は大きな利点になります。

もちろん、良いことばかりではありません。返済の義務があるということは、事業がうまくいってもいかなくても、決めた通りに返し続ける必要があるということです。売上が落ちた月でも返済日はやってきます。この返済の負担が、毎月の資金繰りを圧迫することもあります。借りたお金の返済が手元の現金にどう効いてくるかは、資金繰りガイドで扱う現金管理の話とも深くつながっています。だからこそ、デットは「返せる見通しの範囲で借りる」ことが基本になります。

エクイティファイナンス(出資)とは、渡して得る資金

エクイティファイナンスは、お金と引き換えに、株式や持分を渡して資金を得る方法です。代表的なのは、投資家やベンチャーキャピタルが、その会社の株式を受け取る代わりに資金を出す、という形です。

エクイティの最大の特徴は、返済の義務がないという点です。出したお金は「貸したお金」ではなく「事業に参加するために払ったお金」なので、相手はそれを返せとは言いません。毎月の返済に追われずに、まとまった資金を事業に投じられるのは、大きな魅力に見えます。

ただし、返さなくていい代わりに渡すものがあります。それが、事業の所有権と経営権の一部です。株式や持分を渡すということは、その割合に応じて、事業が生んだ将来の利益(配当)の取り分や、重要な決定に関わる発言力を、相手にも渡すということです。事業が大きく育って価値が高まれば、その価値の一部も相手のものになります。大事な場面で、自分ひとりでは決められなくなることもあります。

つまりエクイティは、「お金は返さない代わりに、経営の自由と将来のもうけの一部を渡す」方法だと考えられます。返済不要という言葉だけを見ると得に見えますが、そこには目に見えにくい別のコストがあるわけです。この性質から、エクイティは、事業を大きく成長させて価値を高め、その成長を出資者と分かち合うことを目指す事業に向いています。

積み重ねた紙幣の上に置かれた電卓

二つの違いを、並べて見る

ここまでの話を、一つの表にまとめておきます。デットとエクイティは、いくつかの点でちょうど正反対の性質を持っています。

見る点デットファイナンス(借入)エクイティファイナンス(出資)
返済の義務ある(利息をつけて返す)ない(返さなくてよい)
相手に渡すもの利息株式・持分(所有権の一部)
経営のコントロール自分のまま残る一部を他者に渡す
将来の利益(もうけ)返済後は自分のもの出資割合に応じて分け合う
向く事業のタイプ自分のペースで堅実に続ける事業大きく成長させ価値を高める事業

こうして並べると、二つが何を取り、何を手放す方法なのかが見えてきます。デットは、返済という負担を負う代わりに、経営の自由と将来のもうけを自分の手元に残します。エクイティは、返済の負担から解放される代わりに、経営の自由と将来のもうけの一部を手放します。

大切なのは、どちらかが一方的に優れているわけではない、という点です。返済がないエクイティのほうが良さそうに見えても、渡している「コントロール」と「将来の取り分」は、事業によってはとても重いコストになります。逆に、返済のあるデットが不利に見えても、事業を自分のものとして握り続けられる価値は小さくありません。取るものと手放すものが、ちょうど裏返しになっている、と捉えるのがよいでしょう。

ひとり事業では、どちらが現実的か

では、ひとりで事業をする人にとって、この二つはどう関わってくるのでしょうか。結論から言えば、多くのひとり事業は、デット(借入)中心になりやすいと考えられます。

理由は、ひとり事業が大切にしがちなものと、二つの性質の相性にあります。自分のペースで無理なく続けたい、事業を自分のものとして手元に置いておきたい。そう考える人にとっては、経営のコントロールを保ったまま資金を得られるデットのほうが、素直に合います。返済の見通しさえ立てば、事業の舵を握ったまま必要な元手を用意できるからです。

いっぽうのエクイティは、実のところ、ひとり事業には縁が薄いことが多いとされています。エクイティは、急成長を目指して外部から大きな資本を入れ、事業の価値を一気に高めていくスタートアップの世界で主に使われる方法です。出資する側は、事業が大きく育って株式の価値が上がることを見込んでお金を出します。自分の身の丈で、堅実に長く続けたいという事業とは、そもそも目指す方向が違うわけです。

もう一つ知っておきたいのは、「返済不要」に見えるエクイティにも、経営の自由や将来の利益を渡すというコストがある、という点です。ひとりで気ままに動ける身軽さは、ひとり事業の大きな強みです。そこに出資者が加われば、その身軽さの一部は失われます。返さなくていいという一点だけでエクイティに飛びつくと、この見えにくいコストを見落としがちになります。

念のため補足すると、これは「ひとり事業はデット一択」という意味ではありません。将来、事業を大きく育てて仲間や外部資本を迎える段階に進むなら、エクイティが選択肢に入ることもあります。要は、どちらが良い悪いではなく、自分の事業がどんな形を目指すのかで選ぶものだ、ということです。創業期に、自己資金・借入・その他をどう組み立てていくかという具体的な考え方は、創業期の資金調達の考え方で扱います。

AI時代の応用・次の一歩

デットとエクイティのどちらが自分の事業に合うかを考えるとき、生成AIを壁打ち相手として使うと、頭の整理が進みやすくなります。

たとえば、事業の目指す形(自分のペースで続けたいのか、大きく成長させたいのか)や、手元の状況を伝えて、「この事業にデットとエクイティのどちらの性質が合うか、それぞれの利点と手放すものを整理して」と投げると、論点を表に並べて返してくれます。自分の頭のなかでは「返さなくていいほうが良い」と単純に傾いていたところに、「渡すコスト」の観点を並べてもらうことで、判断の材料が増えます。二つの性質を比べる思考の下書きづくりには、相性のよい使い方です。

ただし、注意したい点があります。実際の資金調達は、その時々の制度や条件、事業の状況によって大きく変わります。AIが語る一般論は、あくまで性質を整理するための下書きであって、個別の判断そのものを保証するものではありません。特に、融資の条件や出資の実務にあたる場面では、最新の制度・条件は金融機関や公的機関の公式情報、あるいは専門家で必ず確認してください。性質の理解はAIや記事で、具体的な判断は公式や窓口で、と切り分けて使うのが安全です。

次の一歩として、まずは自分の事業が「自分のペースで堅実に続けたいのか」「大きく成長させて価値を高めたいのか」を、一度言葉にしてみてください。そのうえで、外から集める手段の全体像は資金調達の方法一覧へ、創業期にそれをどう組み立てるかは創業期の資金調達の考え方へと進めます。

よくある質問

デットファイナンスとエクイティファイナンスは、何が最も違うのですか。 最も大きな違いは、返済義務と、経営のコントロールを渡すかどうかです。デット(借入)は返す義務がある代わりに、事業の所有権や経営権は自分のまま残ります。エクイティ(出資)は返す義務がない代わりに、株式や持分を渡すため、所有権や意思決定の一部を他者に渡すことになります。

返済しなくていいなら、エクイティのほうが得ではないですか。 そう見えますが、返済不要にも別のコストがあります。株式や持分を渡すことで、将来の利益(配当)や重要な意思決定に他者が関わるようになります。お金は返さずに済んでも、経営の自由や将来のもうけの一部を渡している、と考えられます。

ひとりの事業には、どちらが向いていますか。 一般には、デット(借入)中心になりやすいと考えられます。自分のペースで続けたい、所有権を手放したくないという事業では、返済の見通しが立つ範囲で借りるほうが合うためです。エクイティは急成長を目指し外部資本を入れる事業向けで、ひとり事業には縁が薄いことが多いとされています。

融資はデットとエクイティのどちらですか。 融資はデットファイナンス(借入)にあたります。お金を借りて、あとで利息をつけて返す方法です。返済の義務はありますが、事業の所有権や経営権は自分のまま保てる点が特徴です。

まとめ

資金調達は、大きくデットファイナンス(借入)とエクイティファイナンス(出資)という二つの性質に分けられます。デットは、お金を借りてあとで返す方法です。利息を払う義務はありますが、事業の所有権や経営権は自分のまま残り、コントロールを保ったまま資金を得られます。融資がこれにあたります。

エクイティは、株式や持分と引き換えにお金を得る方法です。返済の義務はありませんが、その代わりに所有権や経営権の一部、そして将来の利益の取り分を他者に渡します。返さなくていいという一点だけを見ると得に見えますが、経営の自由やもうけを渡すという別のコストがある、と捉えておくのが安全です。

多くのひとり事業は、自分のペースで続けたい・所有権を手放したくないという理由から、デット中心になりやすいと考えられます。エクイティは、急成長を目指し外部資本を入れる事業の世界の話で、ひとり事業には縁が薄いことが多いとされています。どちらが良い悪いではなく、自分の事業が目指す形で選ぶもの。その前提として、二つの性質の違いをまず押さえておくとよいでしょう。

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