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資金繰り表の作り方|現金の出入りを先まで見通す道具

personスモゼミ編集部 event2026-07-20 公開
資金繰り表の作り方|現金の出入りを先まで見通す道具

利益は出ているはずなのに、なぜか月末になると口座のお金が心もとない。ひとりで事業をしていると、こうした場面に出くわすことがあります。原因の多くは、入金と出金の時期がずれていることにあります。売上が立っても入金は先、いっぽう仕入れや家賃の支払いは先に来る。この時間差で、手元の現金が一時的に足りなくなるのです。

このずれを前もって見つけるための道具が、資金繰り表です。資金繰り表とは、月ごとに「前月からの繰越(手元の現金)+その月の入金 − その月の出金 = 翌月への繰越」を並べて、現金残高がこの先どう動くかを見通す表のことです。難しい会計の知識がなくても、足し算と引き算だけで組めます。

この記事では、資金繰り表とはどんな表なのか、そして実際にどう作るのかという手順を、仮の数字の例を交えながら解説します。資金繰りそのものの入門的な考え方は資金繰りとはに、日々のお金を管理する習慣はキャッシュフローの管理に譲り、この記事は「資金繰り表という道具を作る」ことに絞ります。

完璧な表を目指す必要はありません。ざっくりでも数か月先まで現金の動きが見えれば、残高が薄くなる月に早めに気づけます。まずは道具の形をつかむことを目的にします。

この記事の要点

  • 資金繰り表とは、月ごとに「前月繰越 + 入金 − 出金 = 翌月繰越」を並べて、手元の現金残高の推移を見通す表です。利益ではなく、現金の実際の出入りを見るための道具になります。
  • 作り方は、縦に入金と出金の項目、横に月を並べ、実際に現金が動く月に金額を入れて、繰越残高を計算していく、という流れです。使うのは足し算と引き算だけです。
  • 金額は、売上を計上した月ではなく、実際に入金・出金がある月に入れるのがポイントです。この一点で、現金がいつ薄くなるかが見えてきます。
  • 作って終わりにせず、実績が出たら数字を置きかえて、先の月の見通しも更新していきます。残高がマイナスに近づく月を早く見つけられれば、支払いの調整や備えに動けます。

資金繰り表とは、現金残高の推移を見通す表

資金繰り表とは、月ごとに手元の現金がどう動くかを並べて、この先の残高を見通すための表です。中心にあるのは、次のひとつの式です。

前月からの繰越(手元の現金) + その月の入金 − その月の出金 = 翌月への繰越

前の月から持ち越した現金に、その月に入ってくるお金を足し、その月に出ていくお金を引く。残ったものが、翌月へ持ち越す現金になります。これを何か月分も横に並べていくと、現金残高が月ごとにどう増減するかが、一本の流れとして見えてきます。

ここで大切なのは、資金繰り表が見ているのは「利益」ではなく「現金」だという点です。利益を見る帳簿は、売上や費用が発生した時点で記録します。いっぽう資金繰り表は、実際にお金が動いた月に入金と出金を書きます。だからこそ、もうけは出ているのに現金が足りない、という時期を見つけられます。利益と現金がずれる仕組みそのものは黒字倒産を防ぐで扱っています。

会計が苦手でも心配はいりません。使う計算は足し算と引き算だけで、表計算ソフトでも手書きのノートでも組めます。まずは形をつかむことから始めます。

作り方の手順:縦に項目、横に月を並べる

資金繰り表は、次の手順で作っていきます。順に見ていきます。

手順1:縦に「入金」と「出金」の項目を並べる

まず、表の左端(縦)に項目を書き出します。大きく「入金」と「出金」の2つに分け、それぞれの中身を並べます。

  • 入金:売上の入金、その他に入ってくるお金など
  • 出金:仕入れ、家賃、外注費、借入の返済、そして生活費など

ひとりで事業をしている場合は、生活費も出金に入れておくのがおすすめです。事業のお金と暮らしのお金は同じ財布から出ていくことが多く、生活費を抜くと、現金の減り方を小さく見積もってしまうためです。

手順2:横に月を並べる

次に、表の上端(横)に月を並べます。今月から数か月先まで、たとえば向こう3か月から半年ほどを置きます。先の月ほど数字は不確かになりますが、おおよそでも構いません。

手順3:現金が実際に動く月に金額を入れる

ここが資金繰り表の最も大事なところです。入金と出金は、実際に現金が動く月に入れます。売上を計上した月ではなく、その代金が入金される月に書く、ということです。

たとえば、5月に納品して売上が立っても、入金が6月末なら、その金額は6月の入金欄に入れます。支払いも同じで、仕入れた月ではなく、実際に代金を払う月の出金欄に書きます。この「計上した月ではなく、現金が動く月に入れる」という一点が、資金繰り表と利益の帳簿との大きな違いです。

手順4:繰越残高を計算していく

項目と金額が入ったら、月ごとに残高を計算します。各月について「前月からの繰越 + その月の入金 − その月の出金」を出し、その答えを翌月の繰越に回します。これを左から右へ順に埋めていくと、現金残高の推移ができあがります。

仮の数字で見る、簡単な資金繰り表の例

言葉だけでは形が見えにくいので、数か月分の簡単な資金繰り表を作ってみます。以下の数字はすべて、道具の形を示すための、明らかに仮のものです。

項目7月8月9月
前月からの繰越30万円35万円15万円
入金(売上入金など)40万円25万円45万円
出金(仕入・家賃・外注・返済・生活費)35万円45万円40万円
翌月への繰越35万円15万円20万円

見方はこうです。7月は、前月繰越30万円に入金40万円を足し、出金35万円を引くと、翌月繰越は35万円になります。その35万円が8月の前月繰越に入ります。8月は入金が25万円と少なく、出金が45万円と多いため、繰越は15万円まで減ります。

ここで注目したいのが、8月末の残高が15万円まで薄くなっている点です。もし9月の出金がもう少し大きければ、残高はマイナスに近づいていたかもしれません。表にして並べたからこそ、「8月あたりで現金が薄くなる」と、事が起きる前に気づけます。これが資金繰り表を作る一番の値打ちです。

積み重ねられた書類のクローズアップ

残高が薄くなる月を、早めに見つける

資金繰り表を作る目的は、きれいな表を完成させることではありません。残高がマイナスに近づく月がないかを、前もって見つけることにあります。

表を横に眺めて、翌月への繰越がだんだん小さくなっていく月や、あと少しでゼロを割りそうな月がないかを確かめます。そうした月が見つかれば、まだ時間があるうちに手を打てます。取れる打ち手には、たとえば次のようなものが考えられます。

  • 大きな支払いの時期を、可能なら少しずらせないか相談する
  • 入金を早められないか、請求のタイミングを見直す
  • 残高が薄くなる月に備えて、手前の月から現金を取り分けておく

大事なのは、こうした調整は「足りなくなってから」では間に合わないことが多い、という点です。支払いの前日に現金がないと分かっても、打てる手はほとんど残っていません。数か月先まで見通しておくからこそ、余裕をもって備えられます。完璧な会計でなくてよいので、ざっくりでも先まで並べておくことに意味があります。

作って終わりにせず、実績が出たら更新する

資金繰り表は、一度作ったら完成、という道具ではありません。作った時点の数字は、あくまで予定の見込みです。実際の入金や出金は、予定とずれることがよくあります。

だからこそ、実績が出たら、その数字に置きかえていきます。7月が終わったら、7月の入金と出金を実際の金額に直し、前月繰越も実績に合わせます。すると、8月以降の見通しも、より確かな数字の上で組み直せます。この更新を月ごとに続けることで、資金繰り表の見通しは少しずつ正確になっていきます。

予定と実績がずれたこと自体は、失敗ではありません。むしろ、どこがどれくらいずれたのかが分かると、次の見込みを立てるときの精度が上がります。たとえば「入金はいつも予定より半月ほど遅れる」と分かれば、次からはその遅れを見込んで表を作れます。作って、動かして、直す。この繰り返しが、資金繰り表を生きた道具に育てていきます。

なお、資金繰り表で使う「将来の売上の見込み」をどう立てるかは、事業計画の数値計画に近い話になります。売上予測の立て方そのものは数値計画・売上予測の立て方にまとめています。この記事の資金繰り表は将来を予測する計画ではなく、あくまで手元現金の月次の出入りを管理する表なので、目的が違う点は押さえておくとよいでしょう。

AI時代の応用・次の一歩

資金繰り表は、決まった足し算と引き算の繰り返しなので、生成AIや表計算ソフトと相性のよい道具です。

たとえば、入金と出金のおおよその項目と金額をAIに伝えて、「前月繰越に入金を足し出金を引いて翌月繰越を出す形で、数か月分の資金繰り表を作って」と投げると、表の骨組みを組んでくれます。「もし8月の入金が予定より10万円遅れたら、残高はどう動くか」といった問いかけで、いくつかの場合を並べて比べるのにも向いています。頭のなかで追うより、表にして眺めるほうが、残高が薄くなる月に気づきやすくなります。

ただし、注意したい点があります。AIや表計算が出すのは、あくまで入れた数字にもとづく計算結果でしかありません。実際に、いつ・いくら入金があり、いくら出ていくかは、AIには分かりません。ここは自分で確かめるほかない部分です。請求書の入金予定日や、支払いの期日といった実際の数字は、契約や取引の状況から自分で拾って入れる必要があります。計算と表づくりはAIや道具に任せ、もとになる入出金の数字は自分で確かめる、と分けて使うのが安全です。

次の一歩として、まずは向こう3か月分の資金繰り表を、分かる範囲で埋めてみてください。そのうえで、資金繰りの考え方をおさらいしたい場合は資金繰りとはへ、日々のお金を管理する習慣はキャッシュフローの管理へと進めます。

よくある質問

資金繰り表と、利益を見る帳簿は同じものですか。 別のものです。利益を見る帳簿は、売上や費用を計上した時点で記録して、事業のもうけを把握するためのものです。資金繰り表は、実際に現金が動く月に入金と出金を並べて、手元の現金残高がどう動くかを見るための表になります。もうけが出ていても現金が足りなくなる時期を見つけるのが、資金繰り表の役割です。

資金繰り表は、どのくらい先まで作ればよいですか。 決まりはありませんが、数か月先まで見通せると、残高が薄くなる月に早めに気づけると考えられます。まずは向こう3か月から半年ほどを、分かる範囲で埋めてみるのがおすすめです。先の月ほど数字は不確かになりますが、おおよその見当がつくだけでも備えの役に立ちます。

会計は苦手ですが、それでも作れますか。 作れると考えられます。資金繰り表で使うのは、足し算と引き算だけです。前月から繰り越した現金に、その月の入金を足し、出金を引いて、翌月へ繰り越す。この繰り返しなので、完璧な会計の知識がなくても、表計算ソフトや手書きで組めます。まずはざっくりでも数か月先まで並べてみることが入口になります。

作った資金繰り表は、そのままにしておいてよいですか。 見直して更新していくのがおすすめです。資金繰り表は予定の数字で作るため、実際の入金や出金がずれることはよくあります。実績が出たら、その数字に置きかえて、先の月の見通しも直していきます。作って終わりにせず、月ごとに更新することで、見通しの精度が上がっていきます。

まとめ

資金繰り表とは、月ごとに「前月からの繰越 + その月の入金 − その月の出金 = 翌月への繰越」を並べて、手元の現金残高の推移を見通す表です。見ているのは利益ではなく現金なので、もうけが出ているのに現金が足りなくなる時期を、前もって見つけられます。

作り方は、縦に入金と出金の項目を並べ、横に月を並べ、実際に現金が動く月に金額を入れて、繰越残高を計算していく、という流れです。使うのは足し算と引き算だけで、表計算ソフトでも手書きでも組めます。ポイントは、売上を計上した月ではなく、入金や出金が実際にある月に金額を入れることです。

そして、作って終わりにしないことです。残高が薄くなる月を早めに見つけて支払いを調整し、実績が出たら数字を置きかえて先の見通しを更新する。この繰り返しが、資金繰り表を役に立つ道具に育てます。まずは向こう数か月分を、ざっくりでも埋めてみてください。

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